初学者の人が煙に巻かれない読みやすさ

――知識が得られることはもちろんですが、このシリーズが145万部以上も売れているのは、わかりやすいことも理由の一つだと思います。嶋田さんはわかりやすい文章を書くために心がけていること、トレーニングしていることはあるのでしょうか。

 特殊なトレーニングはしていませんが、読みやすいと感じた書籍にヒントを得ることは多いです。また、読者視点で書くことを心がけていますね。あとは基本ですが、推敲を繰り返します。

――具体的な読者イメージはあるのでしょうか。

 ペルソナとまではいきませんが、ビジネススクールに通っている人ではなく、30代半ばぐらいの向学心のある一般のビジネスパーソンが読むことを前提にして書いていますね。専門用語を並べて煙に巻いたりするのではなく、初学者の人でも取り掛かりやすく、なるべく読みやすいようにしようという意識を持って書いています。それでも最近は、昔に比べ、より平易に書かなければいけなという認識はあるのですが、そこはバランスの難しいところです。

――シリーズ全てに関わってきたとなると、広い分野の知識が必要だと思います。普段はどのような本を読まれてらっしゃるんですか。

 ビジネス書ももちろん読みますが、その他も多いです。サブカルだったり、歴史物だったり。

――意外ですね。世界史や日本史問わずですか。

 私は世界史のほうが好きですね。最近だと、生物学的エッセンスもありますが、『サピエンス全史』。あと、個人的に好きなのはミステリーですかね。『このミステリーがすごい!』が出たら、思わず上位のものを買ってしまう。あとは政治ものとかも好きですね。ビジネスと通じるところも多少あったりして、歴史的な話もあって面白い。

 経済学の本も好きです。ハードなものよりも、『ヤバい経済学』など、定期的に経済学者が執筆したものがブームになりますが、そういった本は好きでよく手に取りますね。

――経営書やビジネス書は常にチェックされてらっしゃいますか。

 書店に行けば、やはり見てしまいますね。面白そうだというよりも、キャッチアップしなければいけないという意識があるので、最近だとやはりAI関連の本などはパラパラとめくってみます。面白さから手にとるのは翻訳物が多いですね。少し前になりますが『HARD THINGS』も経営のリアル、ビジネスのリアルが感じられてよかった。人間くささが出ている本は好きです。