データが明らかにする、優秀なマネジャーの条件

 余談だが、こういったジョブ・ディスクリプションには見えてこない価値を見える化することの意義は大変大きい。PACではHR系のスタートアップのデモンストレーションも行われてたが、こういった「社内のネットワークを可視化する」技術の企業も数社見られた。

 加えて、なぜマネジャーが直接的に社員のエンゲージメントに関わるのかの要因分析を行い、4つの定義を行っている。

 それらは、

1. 仕事量の適切化
2. コーチング
3. キャリア開発
4. マネジャー自身のエンゲージメント

 である。つまり、マイクロソフトでは、部下としっかり対峙し、社内の人脈にも精通しており、上記のようなスキルや特性を持っているメンバーが優秀なマネジャーになるということを調査から発見したのである。この条件はこれまでも重要だとされてきたものではあるが、マイクロソフトは定量的にエンゲージメントへの影響を把握しており、その結果として投資効果の高い施策に繋げているのである。

 これらの調査結果はマイクロソフトに限らず、多くの企業にとって参考になるのではないだろうか。ただし、これはあくまで同社の調査結果であり、すべての企業に全く同一のものが当てはまるわけではない。重要なのは、人事の分析について自社独自に行うことである。当然ながら、事業特性や文化が異なる業界においては、優秀さの定義は異なる。

 翻って日本企業を見ると、HRテックやピープルアナリティクスについてはまだまだ黎明期である。今後、これらが急速に発展していくことで、人材データの活用が進み、日本のHRマネジメントは大きく変化していく。こういった取り組みは繰り返し行なっていくことで知見が溜まっていき、大きく精度が向上していく。今後の人材マネジメントの競争力を高めるには、積極的に人事が最先端のツールを使い、仮説を数値で検証し、次のアクションに活かしていくということを、積極的に取り入れていく必要がある。