よりよい働き方には、テクノロジーに合わせ変化が必要

――アウトプットはそのままで、働く時間を減らすことが生産性向上だとする声も聞かれますが。

 何をもって、生産性向上と見なすかです。現在の社内リソースをもって、いかにアウトプットを最大化するかという考え方もありますし、社内ランキング競争に陥ることなく、いかに「稼げる力」をつけていくかという考え方もあります。短時間労働だけがイコール生産性向上であれば、改革の方向性を見失うと思います。グローバル競争が激化するなかでは、むしろ、適正な時間と労力で、いかに「稼げる力」を大きくしていくかが重要ではないでしょうか。

――生産性向上や「稼げる力」をつけるためにも、テクノロジーの活用に期待がかかります。

 テクノロジーは本来、働き方を楽にしてくれたり、充実した働き方をもたらしてくれるものだと思います。AIが人びとの仕事を奪ってしまうのではないかなど、悲観的な見方もありますが、うまく活用すれば、よりよく働くことができるチャンスがやって来ると思います。
AI脅威論に対して、ポイントは3つあります。1つは、テクノロジーによって人材不足を代替してもらったほうがいい部分があること。2つ目は、補完的に活用し、人間の能力を高めることができる部分もあります。これらを実現するには、指をくわえて待っているだけではダメです。時代の変化やテクノロジーに合わせて企業や社会も変化していかないと、よりよい働き方は望むべくもありません。これが3つ目のポイントです。

――よりよい働き方とはどんなものでしょう。テクノロジーによって、私たちの働き方はどのように変わりますか。

 最も大きな変化は、時間と空間にしばられない働き方が可能になることです。このことは、日本ではあまり大きな問題としてとらえられていませんが、相当なインパクトがあると私は考えています。