●仕事の成果向上
あなたが常に同僚との間で、もっとよい方法はないかと疑問をぶつけ合っていれば、この創造的な摩擦から新たなソリューションが生まれる可能性が高い。
3COzeの共同創設者であり、You First(未訳)の著者でもあるリアン・デイビーは、こう述べる。「衝突は、チームが難しい状況と折り合いをつけ、多様な観点を総合し、ソリューションを周到なものにする助けになる。衝突は、気分はよくないが、真のイノベーションの源であり、リスクを特定して緩和するうえで不可欠なプロセスでもある」
意見の不一致からどれだけ新たな価値が生まれるか、あらかじめ定まっているケースなど、ほとんどない。
あなたと同僚が、新しい活動を展開する方法をめぐって意見が対立しているとしよう。同僚は、まずは1つの市場でスタートすべきだと考えていて、あなたは、1度に多数の市場に展開するのがよいと考えている。そうなるとあなたは、両方のアプローチの長短を検討せざるを得なくなる。その結果、うまくいけば最適なソリューションにたどり着けるのである。
●学びと成長の機会
あなたの考えに第三者が疑問を呈するのは不快かもしれないが、同時に、学びを得られる機会でもある。他者の意見を聞き、それを取り入れることによって経験を積み、新しいことを試し、マネジャーとして進化できる。
重要なプレゼンテーションのあと、うちの部署の貢献に触れていなかったじゃないかと同僚から文句を言われたら、その言葉は不快ではあろうが、次のプレゼンを準備する際には、全員の視点に立って考えられるようになるだろう。
●人間関係の改善
衝突をともに乗り切ることで周囲の人と親しくなり、相手にとって何が重要か、どういう仕事の仕方を好むかもわかってくる。それは重要な先例をつくることにもなる。「いいケンカ」を経てさらに前進できることを、周囲に示せるのだから。
私の10歳の娘は、それを直観的に知っていた。娘が親しい友人の家に泊まりに行った翌日、「どうだった?」と聞くと、娘は「すごく楽しかった。ずっとケンカしてたの」と答えた。ケンカしていてどうして楽しいのかと、私は尋ねてみた。娘の答えはこうだった。「だってケンカを乗り越えたから、私たちはもう一生の親友よ」
●仕事への満足度向上
何らかの問題について、仕事で建設的に意見をぶつけ合うのを恐れなければ、オフィスに行くのが好きになり、仕事の成果にも満足し、同僚とのやり取りも楽しいものになるだろう。雰囲気を壊したりしないようビクビクした心持ちで過ごすのではなく、仕事をやり遂げることに集中できる。
研究もこれを裏づけている。中国での米国人社員と中国人社員に関するある研究は、衝突を管理するいくつかのアプローチ(互いにウィンウィンの関係を探る、互いに思いやりを持つ、共通の利益を目指すなど)の採用と、職場での従業員の幸福度には相関関係があることを明示した。
●仕事環境がよりインクルーシブになる
ダイバーシティがあり、かつインクルーシブな組織にしたいなら、意見の不一致は不可欠だと考えよう。
アネッサ・パーカーとカーメン・メディナ、そしてエリザベス・シルの3人は、『ロットマン・マネージメント』誌の記事Diversity's New Frontier: Diversity of Thoughtの中でこう書いている。「等質な集団のほうがパフォーマンスに自信を持っているものの、ダイバーシティのあるグループのほうが、実際に仕事を完成させることが多い」。
3人はさらに、マネジャーも部下も「衝突を避けようとする本能的な願望」を乗り越え、「意見の一致そのものが目的だという考え」を捨てる必要があると言う。「うまく運営されたダイバーシティのあるチームにおいては、意義のある意見の不一致は個人的摩擦にはつながらない。問題はアイデア自体にメリットや関連性があるかどうかである」その通りだろう。
3人は、こうも主張する。マネジャーには、チームが創造的、生産的になるような衝突をつくり出す義務がある、というのだ。
要するに私たちは、意見の不一致を恐れないようになるべきだし、異議を唱え、議論し、本音を語っても不快にはならず大丈夫なのだという雰囲気をマネジャーはつくり出す必要がある。
あなたが衝突は可能な限り避けたいというタイプなら、この文章を読むのも辛いかもしれない。安心してほしい。衝突を恐れない気持ちを手に入れるのは、十分に可能なのだ。まずは、以下のアプローチから始めてみよう。