モノづくりのスモールデータで
新ビジネスを創造できる
――人間とAIはどこまで共存できると思われますか。
どれだけ性能が良くなったとしても、AIが出す答えは、あるフレームのそのときの最適解にしかすぎない。人間というのはフレームの中で生きていますが、その外でも生きています。だから、フレームの中の最適解がベストでない場合もあり、人間の判断が必要になってくるのです。
とくにクリエイティブなものに関しては、必ずしもAIの合理的な判断が最適解ではないことが往々にしてあります。ここでも、やはり人間の裁量やセンスが求められます。
これからヒューマノイドが普及してくるかもしれませんが、AIどんなに人間に近づいても現実世界に欲求を持った生物として実際に生きているのは人間であり、AIは生きていない。人間は必ずしも最適なものだけを選択しているわけではなく、現実世界の様々な事象や欲求を鑑みてバランスを取りながら生きているので、「AIから意見をもらう」くらいに考えるのがちょうどいいでしょう。
AIの力をうまく生かすうえで私が今注目しているのは、日本のモノづくりのスモールデータです。
航空機エンジンメーカーのGEは、エンジンの性能を測定するシステムを組み込み、すべての航空機の運行状況をモニターしています。そして、そこから得られるデータを解析することで、航空会社に効率的な運行などをアドバイスしている。このソリューションによってビジネスモデルの創造に成功し、大きな利益を上げています。
製造業が強い日本の企業にはかなりのデータが蓄積されているはずです。モノづくりのデータの使い道を柔軟な発想力で広げていくと、GEのように新しいビジネスやサービスを生み出せる可能性は大いにあると思います。
(構成/河合起季 撮影/西出裕一)