冷水とは、どの程度の冷たさでしょうか。
被験者には、まず通常通り――お好みの熱さで、好きなだけの時間――シャワーを浴びてもらい、その後に所定の時間「できるだけ冷たい水」を浴びるよう求めました。これを実施したのは冬、1月1日から4月1日のオランダで、家庭の井戸水がだいたい摂氏10~12度という、非常に冷たい温度です。4000人を上回るボランティア志願者、うち約3000人の参加者を得られたのは、奇跡的でした。
その人たちはマゾヒストだったのですか。それとも冷水シャワーの愛好家ですか。
もちろん、冷水シャワーを絶対に浴びたくないという人に対しては、この実験はできません。ですが、冷水シャワーを以前から定期的に浴びていた参加者もいませんでした。心臓や呼吸器系に重度の問題がない、健常な成人による混成の集団です。おそらく、アイスマンの話に触発された人もいたでしょうね。
多くの人は、この実験によってつらい思いをするのでは、という心配を表明していて、実際に最初のうちはそうでした。大多数は不快に感じ、冷水シャワーを嫌いになった人もいます。したがって、1ヵ月間やり続けるには打たれ強さが必要だったわけです。けれども時が経つにつれて、参加者は慣れ始め、あまり不快に感じなくなっていきました。
そして1ヵ月が経って、冷水シャワーを今後も続けるか尋ねたところ、91%が「続ける」と回答し、3分の2の人が実際に継続したのです。これこそ私にとって、冷水シャワーのプラスの効果を最も強く示す証です――それが生理学的なものであれ、心理的なものであれ。凍えるような冷水シャワーを浴びるなんて、気持ちよさを求めてやることではないですから。
90秒間の冷水シャワーは、30秒よりも効果的というわけではなかったのですね。
ええ、時間は関係ありませんでした。病欠日数の少なさは、30秒、60秒、90秒のグループ間で同じでした。30秒未満でもよいという可能性はありますが、現時点でわかっているのは30秒ならば十分だということです。
病欠日数の減少以外に、効果はありましたか。
仕事中の生産性は、冷水シャワーを浴びたか否かにかかわらず、同じでした。ただし理論的には、冷水シャワーを浴びた人のほうが病欠が少なかったのだから、実験期間における累積生産性は高いわけですが。また、冷水シャワーを浴びたグループでは、自己申告による生活の質(QoL)の改善が初期には見られましたが、その効果は時とともになくなりました。
病欠の減少効果も、時とともに失われる可能性はありますか。
その可能性はあります。でも私は、たとえ冷たい水に慣れて、不快さや震えが減っても、神経生物学的な効果は残ると考えています。
カナダのニューファンドランド島に移り住んでも、同じ結果が得られるでしょうか。
得られないと思います。なぜなら、人は周囲の気候に適応するよう行動を調整するからです。もし日常的な気温が摂氏マイナス20度のカナダで暮らすとしたら、家や車や職場を暖房で暖め、外出するときには厚着して、体温を37度に保つようにするでしょう。もしかすると、冷気に身をさらして同じ震えの作用を生じさせれば、効果があるかもしれませんが、その仮説を支持するデータはまだありません。
あなたのシャワーの温度はどれくらいですか。
イアン・フレミングの小説の、ジェームズ・ボンドのようなスタイルが私の好みです。まずは湯気の立つ熱いシャワーから始めて、凍えるような冷たい水へと一気に温度を変えるのです。
その習慣を始めてから、何か変化に気づきましたか。
実験の参加者と同じような経験をしました。冷水シャワーにいったん慣れて抵抗力が得られると、活力を得るための朝の取り組みとして、病みつきになってしまいました。気分が悪かろうと元気だろうと、冷水シャワーによって、1日の始まりに弾みがつくのです。
HBR.ORG原文:Cold Showers Lead to Fewer Sick Days, April 04, 2018.
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アリソン・ビアード(Alison Beard)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のシニア・エディター。