職場の孤独が問題とされる2つの理由

「人生のあらゆる問題は、対人関係の問題である」。心理学者のアルフレッド・アドラーは、このように述べた。

 筆者もアドラーの見解に共感しており、特に近年は、組織における人間関係の研究を行っている。具体的には、(1)ネガティブな人間関係を改善する、(2)ポジティブな人間関係を構築する、という2つの側面から、多くの企業を観察してきた。

 その中で非常に興味深いと感じている現象が「職場の孤独」である。後述するが、従業員が職場で孤独に陥ると、本人はもちろん、組織にも負の影響をもたらすことがわかり始めてきたからだ。そうはいっても、従業員の孤独を解消したところで、企業にどれほどのインパクトを生み出すのかと気になる方もいるだろう。だが科学とは不思議なもので、ある問題の解決法を突き詰めていくと、そこに大きなイノベーションが生まれることがある。

 本稿では、孤独の解消の検討を入り口に、組織のあらゆる問題を解決しうる「ウェルビーイング」というアイデアを紹介したい。その前に、職場の孤独がなぜ問題か、企業への影響という観点から2つの主な理由を挙げる。

 第1に、孤独が個人や組織のパフォーマンスに悪影響を与えるためである。

 たとえば、カリフォルニア州立大学サクラメント校教授のハカン・オズチェリクが、672人の従業員とその上司114人を対象とした調査[注1]では、職場での孤独感が強い従業員ほどパフォーマンスが低いと報告されている。オズチェリクによると、そのメカニズムは、孤独感を抱いている従業員は組織に対するコミットメントが低く、周囲の人間が接しづらさを感じるからだという。

 また、社会心理学者であり、フロリダ州立大学教授のロイ・バウマイスターらは、調査の参加者に対して実験的に孤独感を抱かせた結果、論理的思考能力の低下[注2]、および他者に対する攻撃性が見られるようになった[注3]と報告している。孤独は、さまざまなメカニズムを通して、低パフォーマンスを誘発することが示されているのだ。

 第2に、孤独が健康を害するからである。