創造性にあふれるチームとそうではないチームは、何が違うのか。これまで多くの研究者がその答えを探ってきたが、筆者らがシニアエグゼクティブ150人に実施した調査によると、そこには決定的と言える要因が2つあることが判明した。
あなたはいま、企業研修センターの壁にとまったハエだと想像してほしい。
その室内では、12人のマネジメントチームが戦略実行の研修に参加している。不確実で複雑な、新しい問題の解決を試みている最中だ。
最初は演習が通常の道筋をたどっていたので、ファシリテーター役は傍観している。だがほどなく、活動がピタリと止まる。何をしたらよいか、誰にもわからなくなってしまったのだ。
突然、チームの中の比較的若いメンバーが手を挙げて、「どうすればいいか、わかった気がします!」と声高に言う。チームメンバーは安堵して、彼女の指示に熱心に従う。彼女が解決策を持っていることは疑いようもない。
だが、メンバーに指示を出すなかで、彼女が1つミスをして、活動が行き詰まる。誰も一言も話さないが、チーム全体が落胆ムードに包まれる。彼女は自信を喪失する。この若手メンバーは重要なことを確かに学んだが、もうチームに貢献しようとはしない。マネジメントチームはギブアップする。
何が起きたのだろうか。
我々が以前に寄稿した記事(Teams Solve Problems Faster When They’re More Cognitively Diverse)では、多様な考え方を受け入れる認知的多様性(コグニティブダイバーシティ)のレベルが高いチームほど、この種の課題解決で高い成果を上げるという調査結果を報告した。
我々の観察によると、このタイプのチームでは、コラボレーションや問題の特定、情報の適用、規律の維持、ルール破り、新しいアプローチの考案など、問題解決におけるさまざまな行動様式があった。これらのテクニックをうまく組み合わせたチームは、たとえばルール破りが多すぎるチームや、規律維持者が多すぎるチームよりも、高い成果を上げた。
前述の12人のマネジャーチームも、認知的多様性のアプローチをきちんと取っていた。では、何が起きたのか。この疑問を解明するために、我々はデータを再度検討した。その結果、成績が振るわないチームの例に漏れず、このチームでも、活動に貢献するメンバーの割合は比較的少なく、新しいアイデアを試すまでの間隔が長く、同じミスの繰り返しが多いことが判明した。
高い成果を上げたチームは概して、失敗には好奇心を持って対処し、結果への責任を共有していた。それにより、メンバーは懲罰を恐れずに、自分の意見や考え、アイデアを述べることができた。このチームは相互関与を通じて、心理的に安全な環境(サイコロジカルセーフティ)を生み出していたのである。
心理的な安全性とは、アイデアや質問、懸念、あるいはミスについて率直に話しても、罰せられたり、恥をかいたりすることがないと信じられることである。この安全性は相互関与から生み出されるダイナミックな特性であり、タイミングの悪いため息1つで即座に打ち砕かれるおそれがある。
心理的な安全性を生み出し、それを一定のレベルで維持する行動様式がチーム内になければ、メンバーはフルに貢献しようとはしない。そして、各メンバーからの十分な貢献がなければ、認知的多様性の実力は発揮されないままだ。むしろ、不安が募って防衛的な行動様式が優勢になる。
したがって、認知的多様性のあるチームで、いかに心理面での安全性を確立・維持するか、が問題になる。