上司が部下に業績評価の結果を知らせるとき、その内容を一方的に通達するだけでは、彼らのパフォーマンス低下を招くおそれがある。これを防ぐ方法として筆者らが提案するのは、上司による傾聴のプロセスを設けることだ。数々の実験を通じて、聞き手の傾聴が話し手に及ぼすプラスの効果が立証されている。
マネジャーが部下の学習と成長を促すうえで、「業績評価を本人に伝える(フィードバックする)」ことは最も一般的な方法の1つである。
ところが、この方法はむしろパフォーマンスを阻害する場合があることも、研究によって判明している。
筆者の1人(クルーガー)は20年以上前に、フィードバックがもたらす効果に関する実験607件を分析したところ、38%のケースでパフォーマンスの低下を招いていることを発見した。これは評価内容が肯定的か否定的かに関係なく、主に「そのフィードバックによって対象者の自己認識が脅かされる」場合に起きていた。
フィードバックの提供(たとえ肯定的なものでも)がしばしば逆効果に働く理由の1つは、「監督して判断を下すのは、上司だ」ということを示唆するからだ。それによって、部下はストレスを感じて防御的になる場合があり、そうなれば他者の視点を受け入れにくくなる。
たとえば、部下は否定的な評価への対処として、評価者や評価そのものを重要ではないと見なすかもしれない。自尊心を回復すべく、評価を下した人物を避ける形で人脈を再編することさえある。換言すると、評価者への態度を頑なにすることで、自己を守ろうとするのだ。
そこで我々は、もっとさりげない介入、つまり質問をしたり話を聞いたりすることで、この問題を防げないかを検証したいと考えた。