●大胆だが達成可能な目標を設定する
パフォーマンスはモチベーションと相関関係にあり、モチベーションは大胆な目標、すなわち、チームの能力の上限より少し上に設定することで強化しうる。たとえば、最近の研究によれば、1対1のゲームへの参加者は、対戦相手が自分よりも若干優れているときのほうが、相対的に高いパフォーマンスを示した。
タスクを達成するために必要なスキルと、チームのスキルとの間に緊張を生めば、タスクが達成可能であり続ける限り、モチベーションを与える効果が現れる。これと同一線上にあるのが、ヤーキーズ−ドッドソン法則だ。この法則によれば、タスクが適度に困難なとき、パフォーマンスは最高になる。タスクが簡単すぎたり、達成不可能だったりすると、モチベーションはいっこうに上がらない。
●ポジティブなストレスを持続させる
すべての困難なタスクに価値があるわけではないが、価値のある物事のほとんどは困難であり、だからこそ、どうしても達成したいと切望する対象になる。自分が置かれた環境をどう解釈するかが、ストレスをユーストレス(よいストレス)に変えて、希望と目的を生み出すカギ(PDF)を握る。このプロセスをサポートするために、マネジャーにできるのは、目標達成までの道のりに意識を集中させつつ、困難な課題をチャンスととらえることだと、最近の研究レビューは示唆する。
●対立と逆境を引き起こす
優れたマネジャーはメンバーから正直な意見を引き出し、意見の不一致を利用して、より考え抜かれた決定を下すことができる。
多くの場合、明確なプロセスが役に立つ。たとえば、軍隊ではレッドチーミング(敵の役割を演じ、脆弱性評価を実施したり、解析手法を利用して諜報評価を改善したりする演習)の手法を利用して、自隊の能力を徹底的に検証し、大きな犠牲を出す前に自隊に抱いていた幻想を粉々に砕く。同様に、プロジェクトが始まる前にプレモーテム(事前検死)を行い、考えられる失敗をすべて挙げていくことで、対処可能な時期に計画の思わぬ穴を明らかにできる。
上記の提案はおそらく、チーム内の調和レベルを下げるだろう。だが、創造的なパフォーマンスを高めたければ、対立や不一致に対処する心構えができていることが、チームには不可欠だ。これを可能にするための方法を3つ、以下に提案する。
●適切なパーソナリティ特性をチームが確実に有するようにする
万事に通用する策はないとはいえ、誠実性と協調性が集団レベルで高いチームほど、多様性や対立に対処する心構えを、より効果的に養いやすい。このようなチームのメンバーは合意事項に対する説明責任を自分自身に課す傾向が強く、人間関係の対立を丸く収めようと試み、個人的な思惑によってタスクの焦点をそらさないよう努める。
●心理的安全性を高める
心理的安全性は、参加と信頼の雰囲気を醸成する。これによって、チームメンバーは異論や批判といったリスクを伴う社会的行為を積極的に行えるようになるのと同時に、そうしたリスクを伴う行動に対して、過剰に身構えずに、オープンな対応ができるようになる。最近の研究によれば、グループ内に信頼があれば、人間関係や個人間の非生産的な対立を生み出すことなく、タスク上の対立という生産的な対立のメリットを活用できることが判明した。
●慣れるチャンスをチームに与える
時には、時間の経過に勝るものがないこともある。時間をかけて十分に親密になったチームは、心のつながりを築き、数々の経験をともにしてきたため、緊張が生じる場面も生産的に克服できるようになる。たとえばNASAの研究によれば、一緒に働いた経験があるチームは、新たに結成されたチームに比べ、ミスの数が半分程度だった。
宗教団体や政治的・社会的な運動、あるいは家族を見ればわかるように、忠誠心は回復力(レジリエンス)の強力な源だ。また共有する歴史がない場合は、よく似た価値観を有するチームメンバーのほうが、緊張に耐えてタスク上の対立をポジティブな成果に変える傾向が強い。
生産性の高いチームは、緊迫した困難な状況で力を発揮できるから、生産性が高いのである。こうしたチームは、チームの基盤となっている人間関係やエネルギーを損なうことなく、意見の不一致と対立を最大限に活用できるのだ。
優れたリーダーは、適度の対立と緊張に対処できるチームをつくり上げることができると同時に、チーム内に、そうした対立と緊張が生じる状況をつくり出す力量も持っている。
HBR.ORG原文:Too Much Team Harmony Can Kill Creativity, June 28, 2018.
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