我々はこの知見に基づいて、コラボレーションを明確かつ具体的で不可欠なものとするための枠組みを開発した。コラボレーションを、「達成すべき目標」としたのだ。

 この枠組みの中核には、あらゆるチームに向けられる2つの質問がある。1つ目は、「事業成果を上げるためにコラボレーションが欠かせないのはなぜか」。2つ目は、「それらの成果を上げるために、どの仕事、具体的にどの業務がコラボレーションを必要とするのか」である。

 我々は2012年初頭に、この枠組みをマース・ペットケア中国事業部の幹部チームと検証する機会を得た。2日間にわたって、我々は質問を投げかけ、具体的な部分を綿密に話し合った。初日は丸一日をかけて、2つの質問に対する答えをめぐり徹底的に論じ合った。

 最初は困惑と苛立ちが見られた。「事業成果に欠かせない」とは何を意味しているのかが、伝わらなかったのだ。そこで、質問を次のように言い換えた。「チームとして協力して働くことが、個々人の努力の総和よりも有益なのは、なぜだろうか」。これによって会話が前進し、我々が言う「チーム目標」について3時間かけて論じ合った。彼らは最終的に、人材育成と、新たな戦略を事業横断的に展開することを、チーム目標の中心に据えるとの合意に達した。

 2つ目の質問、「具体的にどの仕事がコラボレーションを必要とするのか」は、さらに激しい議論を引き起こした。ある幹部はとりわけ、自分は1人でいる必要があると感じており、自分が担当するどの仕事にも、同僚は1人として加わるべきでないと言う。議論は白熱したが、最終的には他の幹部らが彼を納得させた。やがて我々は、業務の一覧を、個人で処理できるものと、コラボレーションによって各段に向上しうるものに分類できた。

 2日目は責任の所在に焦点を当てた。参加者は、コラボレーションに対するみずからの取り組みを、個人的な業績目標に組み込むことに同意した。そして、その取り組みを支えるために、お互いに期待する行動を具体的に列挙し、それらに対して責任を負うことに同意した。

 ある時点で、参加者のマイヤーズ・ブリッグズ・タイプ指標(性格診断テスト)を比較し議論した。人間関係に関するその議論は15分間続いたが、参加者に促されてコラボレーションの議題に戻った。この事実は、コラボレーションが絆から生じるものではないことを物語っていると思う。我々は最後に、この2日間でともに成し遂げた進歩を持続させるための計画を作成した。

 私は翌年、マース・ペットケア中国事業部のゼネラルマネジャーと数回話をした。その年の最後に話したときには、同社が33%という急成長を遂げたことを知った。驚異的な成果である。ドッグフードの筆頭ブランド単独では、60%の上昇だ。同社が本部に示した財務目標を達成したのは、8年間で初めてであった。

 前年の我々との話し合いは、これらの成果にどの程度貢献したのだろうか。「多大」であったと、ゼネラルマネジャーは語った。チーム目標のおかげで、目指す成果に最も大きなインパクトを及ぼす事項に、コラボレーションの焦点を定めることができたという。合意に基づいて形成された、協働に対する責任意識によって、仕事における人間関係が以前よりもはるかに生産的になったのだ。

 人々を協働させるためには、協働が実際に、結果をどう向上させるのかを彼ら自身に考えさせる必要がある――我々はマースでこのことを学んだ。

 2012年の後半に、我々は十分に完成され検証された枠組みを単一のマネジメント開発プログラムに組み込んで、正式に展開した。「マース・ハイパフォーマンス・コラボレーション・フレームワーク」と名付けられたこの取り組みは、2年も経たないうちに全社に急速に広まった。

 強固な人間関係と信頼は、コラボレーションにおいて大きな意味を持つのは確かだが、それらは出発点ではない。献身的な従業員が共に尽力した結果として生まれるのが、絆と信頼である。成功を志すチームメンバーにコラボレーションを動機づけることで、生産性の高いチームワークを引き出すことができるのだ。


HBR.ORG原文:Stop Wasting Money on Team Building, September 11, 2018.

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カルロス・バルデス=ダペナ(Carlos Valdes-Dapena)
コーポレート・コラボレーション・リソーシズのCEO。著書に、Lessons from Mars(未訳)がある。