大崎 邦彦
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
シニア・マネジャー

首都大学東京大学院理工学研究科 修了。2009年アクセンチュア入社。官公庁、製造業、金融機関、メディア企業など幅広い業界において、事業戦略、組織・ガバナンス改革、営業改革、人材戦略等のコンサルティングに従事。組織・人材プラクティスのコアメンバーとしてHR Tech、HR Analytics等のソリューション開発にも関わっている。

大崎 仮にエッジ組織において新規ビジネスの芽が出来てきたとしても、既存組織の数千・数万人の社員からすると、外部からきた数十人が何か実験を繰り返しているというイメージにとどまり、全社へのインパクトは非常に小さいと、多くの経営者が感じています。

 経営者としての最終的な目的は、既存のコア組織も含めたデジタル変革なのですが、エッジ組織におけるスモールサクセス創出の後に、それをどのようにスケールさせてコア組織全体の変革へ展開していけばいいのか、その方法がわからないという悩みをよく聞きます。エッジ組織で育てたデジタルビジネスは、いずれどこかのタイミングで既存のコア組織と合流させ、レバレッジを効かせて大きく成長させていかなければなりません。エッジ組織にとどめておくならベンチャーと変わりないので、最初からそうしたことを見据えたデジタル人材の獲得・活用戦略で臨むことが非常に重要です。

コア組織には強いリーダーシップを
エッジ組織には自由な環境を

――コアとエッジの組織運営で注意すべき点は何でしょう?

植野 意思決定の仕組みやガバナンスのあり方については、コア組織とエッジ組織それぞれの最適解を考えることが必要です。両組織のテクノロジー活用の方向性は、コア組織が「既存事業の改革≒現状の課題解決」なのに対し、エッジ組織は「新しい顧客体験の創造に向けた試行錯誤(トライアル&エラー)≒未来のあるべき姿の模索」であり、真逆といえるでしょう。これを踏まえると、経営層を中心とした本社の役割・介入の仕方も、コア組織とエッジ組織とでは分けるべきです。

 コア組織の改革には、強いリーダーシップによる統率力の強化が必要です。既存業務は基幹システムとも深く結びついているため、局所的なテクノロジー活用では抜本的な改革効果は望めません。全社的な改革を図るには、「自社の事業を変えるのだ」という強い意志を持った経営層と実行する各部門のリーダーの、強いリーダーシップが不可欠です。

大崎 逆に、エッジ組織には権限を委譲し、既存組織の制度やしがらみにしばられない自由な環境を整えるべきです。新しい顧客体験の創造にはトライアル&エラーの取り組みが欠かせないため、既存組織が持つ重厚長大な経営サイクル・意思決定構造は足かせになりかねません。実際、新しいビジネスを企画しても、既存組織の理論が持ち込まれ、早急な収益化を求められたり意思決定が先送りされたりするケースは大手ネット系企業ですら見受けられます。

 ただ注意しなければならないのは、エッジ組織を完全に独立した状態にしてしまわないことです。その疎外感や孤立感は将来、新規ビジネスを既存事業につなぎ、全社にデジタルケイパビリティを伝播させるときの障害になるおそれがあるからです。権限を委譲しつつも、本社のコントロールを利かせる工夫が必要です。(図表2)

出典:アクセンチュア