日本企業の中でも、いち早くマインドフルネスを取り入れ、大きく展開してきたのがヤフーである。2016年から取り組みを開始し、約7000人中すでにのべ1000人以上が体験プログラムやトレーニングを受講しているという。ヤフーのマインドフルネス・メッセンジャーズチームと、マインドフルネス導入を支援したMiLI(一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート)によるトークセッションをレポートする。(構成:加藤年男、写真提供:ヤフー)

ダボス会議で注目されるEI

 いま、世界でEI(Emotional Intelligence:感情的知性)が注目されている――ダボス会議においても、AIに代表される第四次産業革命時代に人類に求められる能力としてEIが挙げられていることを紹介した。

荻野淳也(おぎの・じゅんや)
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事。Googleで生まれたリーダーシップ開発プログラム「SEARCH INSIDE YOURSELF」の認定講師で、リーダーシップ開発、組織開発の分野で、上場企業などのコンサルティング、エグゼクティブコーチングに従事。慶應義塾大学卒、外資系コンサルティング会社を経て、現在は、マインドフルネスやホールシステムアプローチ、ストーリーテリングなどの手法を用い、組織リーダーの変容を支援し、会社や社会の変革を図っている。最新著書は、『がんばりすぎない休みかた』(文響社)。

 そしてEIを測る指標がEQだ。かつてEIは先天的なもので高めることはできないと誤解されていた。しかし「実はきちんとしたスキルであり、マインドフルネスを通じた適正なワークを積めば高められることがわかってきた」。

 そもそもマインドフルネスとは何か。「マインドフルネスを最も単純に言うと『いまここ』という状態のことで、いまに気づき、いまをありのままに認識するという心の在り方」と説明し、「マインドフルネスは気づき、認識の技術だ」と語る。

 その実践として、いったん自分自身の「評価、判断を保留する」こと、話を聞くときは100%相手に注目する「マインドフル・リスニング」を心掛けること、さらに「安心安全な場の創出」を挙げた。心理的安全性を持つチームは生産性も高いことが実証されているからだ。

のべ1000人以上が取り組むヤフー

 欧米ではシリコンバレーの企業が続々と取り入れているマインドフルネスであるが、日本企業での状況はどうか。最も進んでいる企業のひとつが、ヤフーだろう。同社での取り組みについて、その伝道師的活動を展開するマインドフルネス・メッセンジャーズの中村悟氏は語る。

中村悟(なかむら・さとる)
ヤフー株式会社 マインドフルネス・メッセンジャーズ
グッドコンディション推進室/Yahoo!アカデミア
マインドフルネスはビジネスパーソンの必須スキルであり、継続的なトレーニングの必要性に気づいた。自ら実践者として、2016年夏よりYahoo!アカデミア メタ認知トレーニング(マインドフルネス)を社内展開をリードし、これまでに1000人以上に届けてきた。社外への講演、体験会も積極的に行っている。

「ヤフーでは2016年の夏から、オフィス内のフリースペースとなっている芝生のエリアを使ってマインドフルネスの体験会を行い、希望者にはさらに週に1回60分を計7週間実施するプログラムを実施してきた。それをメタ認知トレーニングと呼んでおり、受講者は累計で1000名を超えている。うち体験会だけで終わる人が600名。7週間のプログラムを受けた人が400名」と紹介した。メタ認知とは自己の認知活動(知覚、情動、記憶、思考など)を客観的に捉え、評価した上で制御することである。

 なぜ盛んかについては、「効果測定を行っており、効果が実感できるからだ」と語り、効果測定の指標として、会社には来ているものの人間関係等でパフォーマンスが低下する「プレゼンティーズム」を挙げた。

「ヤフーではマインドフルネスの未経験者と経験者を比較した場合は約20%、週3回以上の実践者と未経験者を比較するとプレゼンティーズムに40%の差があるというインパクトのある結果が出ている。実践頻度が高い人ほどパフォーマンスを発揮しやすくなることがはっきりとデータに現れていることが、マインドフルネスの参加者を増やしている」と述べた。