SDGs(持続可能な開発目標)をよく耳にするようになり、企業もその達成に積極的である。そう思われるかもしれないが、実際はどうか。筆者らは、ほとんどの取り組みが広報キャンペーンであり、CSRの延長にとどまっていると厳しく批判する。社会課題の解決は単なる社会貢献ではなく、競争優位の確保につながる。本記事では、SDGsを達成するための5つのアドバイスを示す。


 国連で合意された持続可能な17の開発目標(SDGs)は、世界の最も切迫した課題への取り組みに民間部門を関わらせるよう、明示的に策定されている。

 国連が掲げる15年間(2015~2030年までに)という時間軸の4年目に入ったいま、こんな問いが浮かび上がる。はたして企業は、真剣な解決策を実際に推し進めているのか。それとも、うわべだけで中身を伴わない広報キャンペーンと化した活動を、世界中で大々的に始めているにすぎないのだろうか。

 残念ながら、我々FSG(社会貢献事業を支援するコンサルティング会社)の内部調査では、後者を指し示している。見苦しい失敗を回避する可能性を少しでも見出したいならば、企業と国連の双方による、抜本的かつ即刻の方向転換が不可欠だろう。

 本記事に我々が記すプランは、方向性を改め、緊急に求められている進展を遂げるために、必要な方策を提示するものである。

 SDGsに向けたビジネスソリューションには、現実的かつ大規模な商機がある。ユニリーバの前CEOポール・ポールマンが議長を務めたCEO委員会は、SDGsの達成により12兆ドルのビジネスチャンスがもたらされると報告している。そして、国連グローバル・コンパクトによれば、その9500社の参加企業のうち80%超が、1つ以上のSDGs目標の推進に関わっているという。これらの企業の95%は、自社が目標への「大きな」あるいは「実質的な」インパクトを実現するだろうと見込んでいた。

 我々は、企業がその言葉通りに行動しているかどうかを見極めるために、次の調査を実施した。

 最大手グローバル企業100社のウェブサイトの検証。SDGsへの努力が著しいように思われる企業を選んで、幹部への聞き取り調査。国連その他のSDGs関連報告書の検証。FSGの過去のクライアント企業、および共通価値イニシアチブのメンバー企業の検証。そして、企業幹部の国際的な集まりである共通価値リーダーシップ・サミットにおける、我々の仮説の検証である。

 その結果、次のことがわかった。我々が調査したほぼすべての企業のコミットメントは、単なる体裁上のものであるようだ。これまでのCSR(企業の社会的責任)の取り組みが、単にSDGsの目標へと名前をすげ替えただけである。

 目標を前進させるために何か新しいことや違うことを実行している企業は、わずかであった。残る大多数の企業は、SDGsに求められる成果が「これまで通りのやり方」で達成されるなどと、本気で期待しているのだろうか。

 もちろん、SDGsはきわめて高い目標ではある。だが、このような目標が、有意義な社会的進歩に向けて組織を触発するうえで役立つ可能性は、先行した2000~2015年の8つのミレニアム開発目標(MDGs)によって実証されている。

 MDGsは、民間部門をターゲットとしてはいなかったが、世界中の政府、NGO、開発機関に深く影響を与えた。乳児死亡率は45%低下したが、これはMDGsが採択される前の5倍の速さである。マラリアによる死亡は58%急減した。サハラ以南のアフリカ地域における小学校就学率は20%増加した。95ヵ国が公衆衛生に関する目標を達成し、147ヵ国が清浄な飲料水の目標を達成した。公的な国際開発援助は66%増加した。

 これらの変化は、すべてがMDGsによるものではないかもしれない。だが、公共・社会部門の組織の多くが、優先順位、行動指針、資金の割り当てをMDGsに同調させるべく変更し、これらの結果に貢献するような形にしたことは間違いない。

 MDGsからSDGsへと引き継がれた際、民間企業を巻き込むという決定が下された。それは、国連がビジネス界と手を組むのに乗り気でなかった長い歴史の後の、大きな政策転換を反映していた。