山根 具体的な例を挙げましょう。ある地方銀行の事例です。

 この銀行では、口座開設の手続きに60分かかっていました。お客さんが銀行店舗のカウンターで申し込みをして、書類に必要事項を書き込んで印鑑を押し、銀行側が書類を審査して、キャッシュカードを発行するまでの時間です。

山根 圭輔
アクセンチュア
テクノロジー コンサルティング本部 マネジング・ディレクター
インテリジェントソフトウェア エンジニアリングサービス統括

テクノロジーコンサルティング本部において、FinTech/Digitalリード、テクノロジーアーキテクトグループのリードを担当する。

 この口座開設手続きをタブレット端末ですべて完結できるよう、我々は支援しました。必要な情報をチャットで入力できるようにしたほか、書類確認は内蔵カメラとテキスト解析で済ませられるようにしました。既存の基幹システムは変えずにAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で連携し、検印やデータ入力などのバックオフィス業務も削減しました。その結果、口座開設時間を6分に短縮できたのです。まさに90%の効率向上です。

 この銀行ではタブレット端末を使ったこの仕組みを多くの支店に順次導入し、いままでとまったく異なるコンセプトの支店とする予定です。そうなれば、大幅にコストを削減できるだけでなく、例えばタブレットを大学の入学式や週末のショッピングセンターなど多くの人が集まる場所に持っていき、その場で口座開設ができるようになります。つまり、移動型銀行店舗とも言うべき新たな成長領域の芽が出てくるわけです。

 このようにビジネスプロセスを抜本的に変えるだけでなく、新たな事業創造を同時に実現できるテクノロジーの基盤がすでに実用可能なのです。

牧岡 「店舗をなくして、モバイル端末で金融サービスを展開すべきだ」といった提案は、従来から多くの戦略コンサルタントが行っていました。しかし、デジタルテクノロジーを使って、実際にその仕組みを短時間で構築するといったことまでは、できませんでした。

 いま、アクセンチュアは、ここに集まっている3人が所属する「ストラテジー」「デジタル」「テクノロジー」に加え、「コンサルティング」「オペレーションズ」「セキュリティ」という6つの領域でサービスとソリューションを提供していますが、この6部門が連携することでお客さまのワイズ・ピボットの戦略立案から実行までを、まさしくワンストップで支援することが可能です。