「ヒューマン+」の時代には
人とAIの相互学習サイクルを回す

――デジタル化の時代には、コンサルティングファームの仕事のあり方も大きく変わっていきそうですね。

牧岡 当社の戦略コンサルティンググループが企業の戦略立案を支援した後、実行支援のところは各インダストリーを担当するコンサルティング部門に引き継ぐ、あるいはシステムの設計や開発では保科や山根が所属する部門に引き継ぐといった従来のやり方ではなく、戦略の立案と実行、システムの実装と運用までを見据えて、部門を超えたチームとして最初の段階から関わる。そういう仕事の仕方が急速に増えています。

 例えば、私が所属するアクセンチュア・ストラテジーと保科が所属するアクセンチュア・デジタルが一緒になって推進していることの一つに、戦略コンサルタントの仕事をAIによる高度化・効率化するというテーマがあります。

 コンサルタントも経営者も、戦略を考えるということは問題の解法の順列と組み合わせなのです。過去にどんな問題が起きたとき、それをどう解決したか。その解法を100個持っている人より、1000個持っている人のほうが順列と組み合わせの数は圧倒的に多くなる。それだけ戦略立案の自由度、柔軟性が高くなるということです。

保科 学世
アクセンチュア 
デジタルコンサルティング本部 マネジング・ディレクター
アクセンチュア アプライド・インテリジェンス日本統括

アナリティクス・AIソリューションの開発を指揮し、多くのサービスを開発。これらのサービス提供責任者も務める。理学博士。

 しかし、1人の人間が経験できる問題、身につけられる解法には限界があります。ですから、多くのコンサルタントの経験と知識、判断をAIに学習させれば、膨大な解法の中から瞬時に最適な解法を見つけ出すことができるようになる可能性がある。

 そうなれば、3人の戦略コンサルタントが3ヵ月かけてやっていた仕事を、1人のコンサルタントが2週間でできるようになるかもしれません。結果的に、私たちが支援できる企業の数は大幅に増えることになります。

保科 山根が、テクノロジーによってもたらされる新たな能力を身につけた労働者、「ヒューマン+」の話をしましたけれども、私はいま戦略コンサルタントをAIでどこまで強化できるかに興味があります。

 戦略の仮説を立てる場面においては、過去のデータをAIに学習させることで、一人の人間では経験不可能な膨大なデータから示唆を出すことができるし、仮説を検証する場面においてもシミュレーションによって、人間では到底、実行不可能な試行回数を経て最適解を導くこともできます。仮説・検証のサイクルをAIを使うことで高速化し、仮説の精度を格段に高めることができるはずです。

 しかし、AIは過去のデータからの学習、あるいは人間が設定した範囲内で試行錯誤して示唆を出すだけですから、それをどう判断し、どんなビジョンを描くかはやはり人間の仕事です。人がAIに教え、AIから人も学ぶ。そのサイクルをうまく回していけるかどうかが、「ヒューマン+」時代の経営の大きな鍵になると思います。

第3回に続く)

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