自分の価値観と合う情報にたどり着く
その手段としてSNSが活用されている
――企業も自社ブランドに関連するInstagram上のコミュニティで積極的にコミュニケーションを図るようになっています。「ファンベース」マーケティングのアプローチに基づいて、ファンの「共感」「愛着」「信頼」を強め、さらにファンの支持を「熱狂」「無二」「応援」へと高めていくには何がポイントとなりますか。
佐藤 情報があふれる時代だからこそ、人は自分にピンとくるもの、自分の価値観に近い情報を強く欲しています。それにたどり着く手段としてSNSが活用されています。情報のみならず、モノも飽和しています。何を選んだらいいのかわからないなかで、最新機能を備えたものや目新しいブランドよりも、自分の好きなもの、自分の価値観と合うブランドに囲まれる生活に安心や充足を感じています。そうした自分の価値観に合うものやブランドの情報が、ビジュアルコンテンツとしてInstagramで発信されていれば、ファンの支持がより強まる可能性があります。
いずれにしても、ファンから応援されるような存在になるには、企業やブランドの価値、指向性を明確にすべきです。八方美人な存在は、誰からも嫌われないかもしれませんが、熱狂されたり、応援されたりする存在にはなれません。みんなに好かれようとするのではなく、2割のファンを大事にして、自社の価値観を明確に打ち出していく。そういう、ある種の割り切りが必要だと思います。
――今年5月、佐藤さんと野村ホールディングス、アライドアーキテクツの3者で、合弁会社「ファンベースカンパニー」を設立されました。その狙いについて教えてください。
佐藤 人は自分が好きなものを自然と応援したくなるものです。一方、企業にとっては自社の存在価値、社会価値を理解し、支持してくれる生活者の存在がますます重要になっています。例えば、企業を本当に応援したいと思う人はその企業の株式を買い、その企業の商品やサービスも一般の人よりはるかに多く利用してくれるはずです。ファンベースの考え方に基づいて、「マーケティング×ファイナンス×IT」で生活者と企業の新たな関係をつくり上げたいと考えたのが、新会社設立の背景です。
現場の担当者がいくらファンベースの重要性を理解していたとしても、経営陣のコミットメントがなければ、その方向に舵を切ることが難しいのが現実です。今回の合弁事業では、さまざまな企業の経営層に働きかけ、また地方や地域の事業承継のお手伝いも含め、日本を変えるくらいの気持ちで、ファンに愛されるマーケティングを組織的に実践していきたいと思っています。
――それは楽しみですね。どうもありがとうございました。