物の交換によって現生人類は生き延びた
私たちは、お金のことを考えるのにかなりの時間を使っている。お金について話すこともあれば、心配することもある。当面の生活費が足りるのかと思案する。幸運にも手元に大金があれば「新しい車を買おう」とか、「マイホームを手に入れよう」「夢のバケーションに出かけよう」と思う。
お金は古い昔から、人間にとってとりわけ重要な道具だった。しかし、お金は他の大半の道具と違い、ただ考えるだけでも人間の行動に悪影響を及ぼす。つまり、周囲と親しくしたり他者を助けたりすることよりも、自分の気持ちや欲求、目標を優先しがちになる。お金は、個人主義的な動機と人間関係を潤滑にする動機との間に対立をもたらすのだ。
なぜお金が人間の心をとらえて離さないのかを突き止めるには、お金の祖先である物々交換について考えてみることが役に立つ。現生人類とネアンデルタール人が生きていた時代は5000年ほど重なっており、生物学的には、ネアンデルタール人のほうが生き延びるのに有利なはずだった。地球上に誕生した時期が早かっただけでなく、体格も脳も現生人類より大きかった。