●心の充電のために静かな空間をつくる

 どんなに社交的な外向性の人でも、仕事をするためにはオフの時間が必要だ。そこで、ただそこにいて、考えることのできる空間を設置するといい。

 その空間にいる間、従業員は仕事とデバイスから一歩離れることができる。グーグルのように昼寝用マシン「ナップポッド」や、米医療保険大手シグナのように瞑想用の「メディテーション・ポッド」を導入することもできるだろう。あるいは、単に部屋の片隅に快適な枕を用意するだけでもいい。

 従業員は、オフになれる空間があることで、脳神経のデフォルト・モード・ネットワークを活性化できる。ぼんやりとしているこの状態が、脳の中で情報を切り分けたり、異種のアイデアをつなぎ合わせたりする重要な役割を果たしている。

 私がエンバシー・スイーツ、ホームウッド・スイーツ、ホーム2スイーツ・バイ・ヒルトンとともに実施した調査によれば、89%の人が、1日を通して仕事環境を変えることは、気持ちを前向きにしてくれると信じている(注:私はこの調査のコンサルタントを務めた)。

 ●スマホなしの休憩を奨励する

 働き手はデバイスから離れたいと望んでいるにもかかわらず、50%以上の人が、休憩時間に自分のスマホを手に取っている。休憩にスマホを持って行く従業員は、休憩後に活力が回復したと感じづらく、仕事に戻った後の生産性が低めであるという研究結果が出ているにもかかわらず、である。

 全世界で4000人超の従業員を対象とした2019年の研究によれば、「働いていてあまり幸せではない」と答えた人は、昼休み中にソーシャルメディアを利用して過ごしている可能性が約57%高いのに対し、「働いていて幸せなほうだ」と答えた人は、友人とくつろいで昼食をとる可能性が約275%高かった。

 韓国の働き手450人を対象としたある研究からは、短い休憩時間中を携帯電話なしで過ごした人は、休憩中に携帯電話を携行した人よりも、実際に携帯電話を使ったかどうかにかかわらず、活力を感じ、感情的な疲れは小さいことがわかった。

 さらに恩恵を高めるには、従業員がポジティブな習慣を実践する(日記をつける、感謝していることを書き留める、瞑想する、何気ない親切な行いをする、歩きまわる、同僚と連絡をとる)ことで、休憩を最大限に活用し、その日1日の活力を補充するよう奨励することだ。

 ●コミュニケーション方法に関する取り決めを設定する

 上司が連絡してきた場合、多くの従業員はただちに返事しなくてはならないと感じる。たとえ連絡が勤務時間外であったり、週末であったり、あるいは休暇中であったりする場合でも同様だ。米国の労働者の55%が、午後11時以降にもメールをチェックしていると報告している。

 携帯電話所有者の44%は、ベッドの隣にスマホを置いて寝ている。夜間のいかなる電話、メール、その他の新情報を確実に逃さないようにしたいからだ。

 企業幹部は、従業員が返事を期待される時間と方法に関する方針を明確に定めることで、従業員のためにもっとポジティブなデジタル文化を創出できる。デロイトのような企業は、「チーム憲章」をつくり、望ましいと期待されるコミュニケーション方法の明文化に着手している。

 ●従業員が集中する時間を確保するよう促す

 たえ間ない会議やらメールやらで、多くの従業員は、実際に仕事に取り組むためのまとまった時間がないと感じている。たとえ55分間でも自分自身の時間を持てた従業員は、エンゲージされて(56%)、友好的で(53%)、愉快で(23%)、賢くなったとすら(22%)感じると報告している

 従業員を最も生産的な状態にするために、スケジュール上でまとまった「集中する時間」を確保するよう促すことだ。

 短時間、自動応答機能を設定して、いま何をしていて、いつ返事できるかを相手に知らせるのもよいだろう(「いま、プロジェクトを終わらせるために、メールを見られません。1時間後にお返事いたします」など)。このようなちょっとした通知は、他のチームメンバーへ敬意を伝えつつ、よい仕事をすることに重きを置いているという合図を送ることにもなる。

 雇用主は職場に心理的な空間と物理的な空間の両方を積極的につくることで、注意散漫を抑制し、長期的なエンゲージメントを後押しできる。いまこそ、従業員に(リアルな)休憩を与えよう。そうすることで、部下のポテンシャルを目一杯に引き出すことができる。


HBR.org原文:4 Ways to Help Your Team Avoid Digital Distractions, July 12, 2019.

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エイミー・ブランクソン(Amy Blankson)
ポジティブ・リーダーシップに関するコンサルタントで、The Future of Happiness(未訳)の著者。国連のグローバル・ハピネス・カウンシル委員。テクノロジーの意図的な利用・開発を通じて人間関係を向上するためのネットワークである、デジタル・ウェルネス・コレクティブの共同創設者でもある。