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米国の主要企業が名を連ねる財界ロビー団体ビジネス・ラウンドテーブルは、2019年8月、「企業の目的に関する声明」を発表した。株主至上主義との決別を宣言した声明は大きな話題を呼んでいるが、CEOは本当に、その内容を実行するつもりがあるのか。単なる自己アピールではなく、真のステークホルダー資本主義を実現する覚悟があるのだろうか。筆者は、経営者たちがそれを証明するための6つの方法を示す。


 ミルトン・フリードマンが生きていたら、パニックを起こしているに違いない。米国ロビー団体ビジネス・ラウンドテーブル(BR)の会員企業経営者181人が、企業には幅広い責任があるとする声明に署名して、株主至上主義というカルト的な考え方に終止符を打つ方向性を示したのだ。企業経営者は、幅広い社会目的を宣言し、それについて結果を出すべきだというプレッシャーは大きくなる一方だろう。

 だが、『ワシントン・ポスト』紙が指摘するように、今回のBRの声明は、多くの意味で「過去への回帰」である。

 BRは1981年に、企業は株主の利益と「他の関係者の正当な懸念」のバランスを取る必要があると宣言している。ところが「他の関係者」の懸念は、1997年にBRが「株主至上主義」というドクトリンを受け入れたとき、どこかに消えてしまった。つまり今回の声明は、1980~1990年代に「企業の唯一の目的は株主価値を最大化することだ」いうフリードマンの考え方が絶対的になる前の、常識的な企業目的の解釈が主流だった時代への回帰といえる。

 それでも、BRのイニシアチブが歓迎すべきものであることに変わりはない(やや遅きに失した感はあるが)。米国のリーディングカンパニーの経営者181人が、公然と結束を乱したことは著しく重要だ。

 だが、複数のコメンテーターが指摘するように、本当に重要なのは、CEOたちが次に何をするかである。ステークホルダー資本主義は、単なる自己アピールの手段ではないと、彼らが証明できるチャンスはさほど大きくない。

 では、本気であることを証明するためには、CEOと取締役会はどのような行動を検討するべきなのか。私たちが提案するのは、以下の6つの領域の少なくとも一つで、断固たるリーダーシップをとることだ。