日本企業の失敗に見られる3つの共通点

 なぜこのような失敗が続くのだろうか。品質問題が見抜けなかった、市況が急速に悪化した、などの個別理由も多々あるが、我々は総じて3つの共通した問題があると考える。

 1つ目は、そもそものM&Aの累積経験量の不足である。世界の主要先進国における売上5億ドル以上の上場企業を対象に調査をしたところ、頻繁にM&Aを行う企業の割合でみると日本は約17%で最下位、日本以外の主要国のその割合が約43%であるのに比べると、半分以下にとどまっている。比較的事情のわかった国内でさえM&Aの経験が乏しい中で、いきなりグローバルなM&Aに打って出るというのは、なかなか難しい。

 M&Aも他の事業活動と同じく、経験がモノをいう。小さくてもしっかりと結果の出るM&Aで経験を積み、また失敗した案件を真摯に総括して、自社なりのM&Aの「型」を構築することが、グローバルな大型スコープディールの前に求められる、不可欠な布石であると、我々は考える。

 2つ目は、シナジーの過大評価と、その一方でのシナジー実現へのスピード感・徹底度の弱さである。スコープディールの場合、事業の重複が小さいため、シナジーは生まれにくい。その中で確実にシナジーを出すためには、本社機能の統合を含めた間接部門のスリム化が避けて通れず、場合によっては買収側である日本の本社機能をスリム化し、海外に移すことも必要になる。

 しかしながら、日本企業のアウトバウンドM&Aにおいては、こうした実現性の高いコストシナジーは過小評価(あるいはリスクや実現困難度の過大評価)され、技術や新製品による売上シナジーを過大評価する傾向が強い。

 もちろん、買収後の事業計画として、そうした売上シナジーの実現を目指すことはエキサイティングであるし、是非トライしていただきたい。ただ、それと買収時の企業価値算定や買収価格の交渉は別問題である。ましてや、「買収ありき」「価格ありき」で、誰も責任を負えないシナジーを創作することは絶対にあってはならないが、残念ながらそうした事例は少なくない。

 3つ目は、M&A戦略の土台となるべき全社戦略の不在である。大型M&A、特にアウトバウンドM&Aでは、自らが何者であるか、全社戦略として何を目指すのかが、改めて問われる。特に、先進国でそれなりに実績を上げてきた企業を買収するのであれば、相手もこちらを値踏みしてくる。そのときに語るべき明確な全社戦略がないと、価格勝負でパワープレイに頼るしかなくなってしまう。

 しかも、日本企業のアウトバウンドM&Aでは、M&Aそのものが戦略となってしまっている事例が少なくない。M&Aはあくまで手段である。どういったビジネスモデルを目指し、どこでどう勝ち切るのか、そのためにこのM&Aがどう活きるのか、という明確なストーリーの不在が、買収後の方針不一致、放任、業績低迷の大きな要因になっているのではないだろうか。

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 後編では、今回の調査で行ったケーススタディや、海外M&Aで実績を上げている日本企業の経営者の方々へのインタビューなどを踏まえ、4つの「成功への道」を提案したい。
(つづく)


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