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部下が仕事でミスを、それもお粗末なミスをしたとき、あなたはどんな言葉をかけるだろうか。怒りの感情に支配され、「君は何を考えていたのか」と責め立てるのではないか。その行為により、相手に不快感を与えることには成功するかもしれないが、優れたリーダーの振る舞いとはかけ離れている。筆者は、過去を問うのではなく、将来に向けた質問をすべきだと主張する。
あるヘッジファンドのCEOを務めるジェフリーは、配下のポートフォリオマネジャーの一人、トムが成立させたお粗末な取引に憤慨していた。彼はトムを自分のオフィスに呼んだ(実在の人物による実話だが、ここでは名前は変えている)。
「とんでもない取引だ。君はいったい何を考えていたのかね?」と、ジェフリーはトムを問いただした。
会話のムードは、ただちに悪化した。最初の質問がこれでは、致し方なかっただろう。
なぜ、この質問で始めてはいけなかったのか。
「君は何を考えていたのか」は、過去に焦点を当てた質問である。何を考えていたか、トムがジェフリーに説明しようとすると、ミスを再認識することになり、当然ながらその説明は自己弁護的になる。だがもちろん、いまの彼が必ずしも同じように考えるわけではない。
会話の続きの展開を予想してみよう。トムはその取引を成立させた理由を説明し、ジェフリーは彼のお粗末な判断に腹を立てるだろう。その結果、双方が苛立ち、落胆して会話を終えることになるはずだ(予想通り、現実もまさしくそのようになった)。