感情的勇気(emotional courage)とは、いかなる感情にも支配されない意志である。

 この勇気は完全に開発可能であり、開発することでリーダーシップを効果的に発揮し、事業の成果を得て、部下を啓発するコミュニケーションを取り、意図した通りの影響を与える能力を高められる。なぜそう断言できるのかといえば、我が社ブレグマン・パートナーズが提供するプログラム「リーダーシップ・インテンシブ」で、感情面の勇気を高めた人たちがどのように変化したかを測定したからだ。

 ただし、部下を啓発して彼らから最良のパフォーマンスを引き出すには、どのようにしてコミュニケーションを取るとよいかを知ることと、それを現実に実行すること、しかも感情が高まってカッとなっているときに実行することは、まったく別の問題だ。

 優れたコミュニケーションを実現するための秘訣を、以下に3つ示そう。

(1)感情的になっているときは、自分の中のいかなる衝動的な反応も信用してはいけない。何かを言ったり、行動に移したりする前に、立ち止まってひと呼吸入れよう。

(2)次の問いを心の中で自分に投げかけよう。「次に起こす私の行動で、相手からどのような成果を期待しているのか。つまり、私がコミュニケーションを取った結果、何が起こることを期待しているのか」。ここでは現実的な成果を求めるようにしよう。その答えが、「相手を嫌な気持ちにしたい」だとしたら、その理由を自問しよう。あなたの望みは、相手が嫌な気持ちになることで叶えられるだろうか。相手が次回、よりよい決定を下すことが望ましい反応であるならば、それこそあなたが求めている成果だ(相手が「嫌な気持ち」になった結果、よりよい決定を下せるようになる、と思っているとしたら、あなたのその発想は間違っている)。

(3)あなたが最終的に求める結果へと導く可能性が最も高くなるように、行動や発言の内容を決めよう。往々にして、あなたの究極の目的を達成する可能性が最も高い会話は、過去ではなく、将来についてのものであるとわかるだろう。

 あなたがリーダーで、部下の業績に不満を感じているのなら、ひと呼吸置いて、自分が求める成果を確認したうえで、今後どうする計画かを部下に尋ねよう。

 逆に、あなたが部下だったらどうだろうか。あなたがミスを犯して、上司がジェフリーのように思慮に欠ける質問、「君は何を考えていたんだ?」をあなたに投げかけたとしたら、どうすればよいか。

 前述したように、会話をうまく進めるのは困難だろう。困難ではあるが、不可能ではない。

 上司が過去のことを問いただしてきたとしても、今度はあなたがひと呼吸置いて、自分が望む成果を自問する。次に、ベストな行動は、尋ねられた質問の代わりに、聞かれなかった将来に関する質問に答えることである。

 たとえば、次のように答えてはどうだろうか。「何を考えていたかといえば、明らかに間違ったことを考えていました。ですが、次に同じような状況に直面したら、ここを変えたいと考えています……」


HBR.org原文:What to Say When Your Employee Makes a Mistake, September 11, 2019.

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ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
ブレグマン・パートナーズCEO。同社はシニア・リーダーを対象として、組織にとって最も重要な任務について、説明責任を喚起して集団行動を鼓舞するためのアドバイスを行っている。既刊に『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』がある。最新作は2018年7月刊行のLeading with Emotional Courage。「ブレグマン・リーダーシップ・ポッドキャスト」のホストも務めている。ブレグマン・パートナーズのサイトから、リーダーシップを評価し、改善点を突き止めるための無料診断を受けることができる。