お客さまが何を迷い
何を選ばなかったかの情報を蓄積する

石川 新しい技術を取り入れ、目指しているところはどこなのでしょうか? 顧客に対して新しい価値を提供していくためには、どのような展開を考えているのですか?

高家 現在、カインズカードの会員は1000万人ほどいて、そのうちの700万人くらいがアクティブです。その方たちが、いつ、何を買ったか、いわゆるPOSといわれるデータはわかります。しかし、そのデータからは、お客さまが何と何で迷っていたのか、そして何をやめたのかはわからないのです。我々がわかっているお客さまの情報は、まだまだ、本当にごく一部なのです。

 これからやろうとしていることはそれらのお客様の行動を幅広く知ることです。

 その次は、お店の中だけでなく、お店に来る前からそのお客さまが何に関心を持っているかというところまで知りたいと思っています。そこまでどんどんお客さまの行動に関する情報を広げていきたいというのが今の構想で、そのためのプラットフォーム作りを考えています。

「クリック&コレクト」を始めとした
新たなサービスでシームレスな体験を提供する

石川 アマゾンのようなネット環境とリアルな店舗の融合がますます進んで来ていると思うのですが、特に注目されている「クリック&コレクト」(商品をECサイトで購入し、リアル店舗などで商品を受け取る仕組み)という形で、シームレスに体験を飛び越えてくるような取り組みもよく耳にします。

高家 そうですね。すでにアメリカでは「クリック&コレクト」が普及しています。もちろん地理的な条件や購買行動が日本と違うので、日本でもアメリカのように普及していくのか予測できない面はあります。ただ、店舗に来る前からお客さまの購買行動が始まっているわけで、スマホで選んで、店舗で商品を受け取るという行動は、ドンドン浸透していくと思います。

 カインズではまず、職人さんを対象にサービスを始めました。職人さんは忙しい中、自分に必要な部材や道具を買いに来るわけです。アンケートやヒアリングの結果では、「とにかく、たくさんのお店を回りたくない」「あっちこっち探したくない」「行った店で一揃え買って、すぐに現場に戻りたい」と。

 当たり前ですが、職人さんならではのニーズです。さらに深掘りすると、いろいろなことが見えてきます。

 この店に自分の欲しいものがあるのか、ないのか。あったとしても、10個必要なときに5個しかなかったら、結局、別のお店に行って、探して、追加で5個買わなければなりません。これをものすごく嫌がる。だったら先に在庫を見せてあげればいい。

 ということで、カインズの「資材館」という職人さん向けのモノを多く売っている店舗の在庫をスマホ上で見ることができるようにしました。職人さんはお店に来る前に確認し、しかも必要な個数を来店前に取り置きできて、お店に行ったらすぐにカウンターで受け取り、現場に戻ることができるのです。

 このサービスはまだ実験段階ですが、職人さんには好評です。これは「クリック&コレクト」の1つの形だと思っています。