細分化された顧客には「パーソナライズ」された価値提供が必要だ。そのためにはテクノロジーを活用した顧客接点の部分の「パーソナル」化がカギとなる。カインズは最先端技術を見極める「デジタルアドバイザリーボード」と、最先端技術を獲得するためのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の設立、さらに新たなビジネスモデルに挑戦する人材を呼び込むための「CAINZ INNOVATION HUB」の設置と、矢継ぎ早に手を打っている。カインズの高家正行社長に、「IT小売企業」実現へ向けた今後のチャレンジを伺った。
「CVC」を設立し
テクノロジーの導入に乗りだす
石川 第1回において、「ストレスフリー」「パーソナライズ」「エモーショナル」の3つの目的を叶えるべく、「IT小売企業」の実現を目指すというお話がありました。実現に向け、リアル店舗の強みとテクノロジーを掛け合わせるために必要な技術、優れた技術を広く取り入れるべく、どのような取り組みをされているのですか?

代表取締役社長
高家 正行
1985年慶應義塾大学経済学部卒業、三井銀行(現三井住友銀行)入行。1999年A.T.カーニー入社、2004年株式会社ミスミ(現株式会社ミスミグループ本社)入社、2008年~13年ミスミグループ本社 代表取締役社長。2016年株式会社カインズ入社、取締役(非常勤)就任、2017年取締役副社長就任、株式会社大都社外取締役就任。2019年より現職。
高家 DXの推進に向け、3つの新たな体制を構築しました。第一に、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を設立しました。我々がファンドを組成して、シリコンバレーのプレーヤーと戦略的なアライアンス契約を結んだのです。彼らが、我々の展開する小売ビジネスにおいて役に立つであろう最先端の技術を持っているベンチャー企業を探してきてくれて、その技術を我々が取り込むということを仕掛け始めています。
ベンチャー企業に投資するかどうかは、その企業次第です。企業が資金を求めているのであれば、投資することも1つのアプローチです。そのために、ファンドを組成し、動き始めたところです。
例えば、お客さまの購買データだけではなく、店舗内外の行動データなどをきちんと結びつけていくことは、「パーソナライズ」を実行していくために不可欠な技術です。実際に海外ではそのようなプラットフォームを作っている会社があります。
石川 店舗でAR(Augmented Reality:拡張現実)やVR(virtual reality:仮想現実)を活用した、さまざまな「エモーショナル」な体験ができる仕掛けがドンドン生み出されてくる期待感がありますね。