
中国発の動画アプリ「TikTok(ティックトック)」は世界中でユーザーを獲得し、ネットフリック、ユーチューブ、フェイスブックなどと肩を並べる存在にまで成長した。TikTokの開発元であるバイトダンスの評価額は、750億ドル以上とも言われている。同社を率いるのは、創業者のチャン・イーミン(張一鳴)だ。チャン氏はいかにして、中国国内のみならず、海外でも大成功を収めるビジネスをつくり上げたのだろうか。
大人気の15秒動画アプリ「TikTok(ティックトック)」を開発したバイトダンス(ByteDance)(本社・北京)ほど、短期間で成功を収めたIT系スタートアップは少ない。TikTokはわずか2年の間に、150ヵ国75言語で10億ダウンロードを超え、ネットフリックスやユーチューブ、スナップチャット、フェイスブックなどの企業と肩を並べるまでになった。
ユーザーがこのアプリを使ってスマホでつくり、共有するのは、お笑い系や口パク、犬のグルーミング法など、ありとあらゆるジャンルの動画だ。そのテンポよく切り替わる素人コンテンツが、世界中の若者を虜にしている。
翻訳がほとんど必要ないTikTokは、テンセントのメッセージングアプリ「WeChat(ウィーチャット)」のように、中国で成功している他のアプリよりもはるかに広く浸透している。WeChatは、中国では誰もが使っているが、中国以外ではおおかた、海外の中国人コミュニティが母国にいる人と連絡を取るのに使用されている。
中国ではグレート・ファイアウォールがインターネットを検閲し、米国の一部のSNSサイトへのアクセスをブロックしているが、バイトダンスの創業者チャン・イーミン(張一鳴)のような中国人起業家は、中国国内だけでなく、海外の開かれた競争市場でも成功できることを証明して見せている。
ネットが検閲される中国市場向けと、中国以外の海外向けという2つのバージョンのTikTokをつくるというチャンの戦略は、世界展開を目指すデジタルコンテンツ企業――国内にとどまらず、海外展開という新たな野望を抱く中国のデジタルスタートアップを含む――にとって、新たなモデルになりうる。また、中国市場参入で深刻な制約を受けている米国企業にも、何らかの示唆を与えるかもしれない。