●本人の認識度をチェックする
心の安定を保つために他人に依存する人は、どれほど他人を疲れさせているかに気づいていないことが多い。感情の揺れが大きいのは自分にとっては普通のことなので、他人の許容範囲が異なることに気づいていないとも考えられる。
この問題に取り組むために、その部下との1対1のミーティングを設定することから始めよう。このミーティングで、本人の行動が同僚に及ぼしている影響を認識しているかを問い、判断する。
アナは、ティムに次のように尋ねて会話を始めた。「あなたは自分がどのくらい同僚からの支えの言葉を求めているかわかっている?」。続けて「この部署にとって、あなたの存在がいかに重要か伝えてきたつもりだけれど、もしかしたら、私があなたの才能をどれほど高く評価しているかは、明快に伝えていなかったかもしれない」と言い、彼の価値を認める気持ちがあることを示した。
あなたがこのような会話を交わす場合、具体的な行動の例を挙げて、自分の質問を補強する準備をしてほしい。もし相手が驚いているようなら、そのようなフィードバックを受けるのが初めてなのだろう。この場合は、線引きをわかりやすく説明するといい。どのような感情表現や他のメンバーへの要求が妥当で、どのようなものが問題か、その理由とともに示そう。
逆に、問題があると認識している場合は――ティムの場合はこちらだったが――彼らの行動が他人にどれだけ悪影響を及ぼしているかを、わかっていないのかもしれない。このときは、より率直なフィードバックが最適な対処法だろう。
●感情の境界線について単刀直入に話す
最初の会話が計画通りにいかなかった場合でも、諦めないでほしい。心の安定のために他人に依存する部下に距離をとらせようとするあまり、リーダーは誤って、彼らと過ごす時間を制限しようとする。しかし、それは対処療法にすぎず、リーダー自身が精神的に疲れるのを一時的に減らすだけに終わる。もしあなたが部下のニーズを満たさなければ、彼らはその代わりとなる別の方法を求めるだけだ。
心の安定を保つためにチームメンバーにどこまで支えてもらえるのか、どこからがいけないかの範囲を明快に示すには、もっと効果的な方法がある。
感情の問題を抱えたメンバーと二人で会話をするときに、境界線をはっきり引こう。たとえば、アナは次のように言うことで、手厳しくなったり批判的になったり、否定的になったりすることなく、ティムのような人に対処することができた。
「あなたが質の高い仕事をしていると認めていることを、他にどんな方法で伝えればいいのか分からない。あなたには、私が認めていることがなぜわからないのかを考えてほしい。特に興味を持って探ってほしいのは、あなたがこれ以上の認識を必要とする動機はどこにあるのかということ。それがわかれば、自信がないときも一人で対処できるようになるはず」
あなたが境界線を引けば、当人はやむなく、心の安定を保つために助けを求める必要があるのはいつなのか、控えたほうがいいのはいつなのかを考えることになる。もし相手が一線を越え続けた場合には、合意した境界線内に引き戻すことができる。