
2019年3月、女子サッカーの強豪である米国代表チームが、男女同等賃金を求めて裁判を起こしたことは世界中で大きな話題を呼んだ。過去にも一部の選手が性差別の解消を訴えてきた経緯があるが、今回は代表選手全員が訴状に名を連ねたことで、スポーツ界の枠を超えたムーブメントを生み出している。彼女たちによる戦いは、差別と戦う従業員たちに、そして企業に対しても重要な教訓を与えてくれた。
サッカーの米国女子代表チームが、雇用主である米国サッカー連盟(USSF)による性差別を主張して、裁判を起こしたのは今年3月のこと。プロスポーツの世界で、この種の訴訟が起こされるのは初めてだ。
裁判(現在も係争中)は、男女同等の賃金を求める長年の主張の結果であり、チームが4度目の女子ワールドカップ(W杯)を制したこともあり、メディアでも大きく取り上げられた。訴状には28人の代表選手全員が名を連ねており、その男女平等に向けた戦いからは、ビジネスの世界でも学べる教訓がたくさんある。
女子代表チームを取り巻く環境と、ビジネスの世界には、明らかな共通点がある。
米国ではいま、従業員100人以上の事業主に対して、詳細な賃金データ(女性に対する報酬を含む)を、雇用機会均等委員会(EEOC)に提出することが義務づけられている。その初の提出期限が迫っている。世界にはまだ、男女の賃金格差をゼロにした国はないこと、そして、その実現には200年以上かかるかもしれないことを考えると、EEOCの報告書が、男女の賃金格差解消に一石を投じる可能性は十分ある。
サッカーの米国女子代表チームは、企業や差別と戦う人に何を教えてくれるのか。雇用主は、どう対応すればいいのか。