こうした問題に対処するためには、監視委員会の権限を、コンテンツ削除だけでなく、フェイスブックの中核的ビジネスモデルに関する、もっと重大な懸念にまで拡大する必要がある。

 消費者や市民の個人情報を守るためには、フェイスブックによる個人情報の取扱いを監視することが必要だ。また、同社の戦略的買収とデータガバナンスを監視して、反競争的なビジネス慣行を阻止する必要がある。さらに、フェイスブックの意思決定アルゴリズムを監視して、バイアスがかからないようにする必要がある。株主の力や政府の監視、第三者の監査、業界の規制、あるいは監査委員会の権限拡大など、このような監視を実践する方法はたくさんある。

 フェイスブックは、米国だけでなく世界中でメディア・コンテンツの製作と拡散に重大な影響力を持つ。なかには、ユーザーの大多数が、フェイスブックはインターネットそのものだと信じている国もある。

 そのメディアとコミュニケーションに対する広範な支配力を政治の世界に重ね合わせて、ロシアなど国内外の悪意のアクターが米国などの民主的選挙に狙いを定めていることを考えると、問題の根本をなすビジネスプラクティスを、何らかの形で公的に監視する必要性があることは、明白だ。


HBR.org原文:Facebook's Oversight Board Is Not Enough, October 16, 2019.

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ディパヤン・ゴーシュ(Dipayan Ghosh)
ハーバード・ケネディ・スクール研究員。同大学院プラットフォーム・アカウンタビリティー共同ディレクター。オバマ政権でテクノロジー経済政策顧問を務めたほか、フェイスブックの個人情報および公共政策問題担当顧問を務めた。著書Terms of Disservice(未訳)が近く刊行予定。ツイッターは@ghoshd7