
出産後に職場復帰する母親は、さまざまな課題に直面する。その中でも表立って語られない難問として、職場での搾乳が挙げられる。搾乳室があっても希望のタイミングで使えなかったり、会議の連続でそもそも時間を確保できなかったりするケースがあまりに多い。筆者らの調査により、授乳期間中の母親たちを支援することは、彼女たちの幸福感や生産性の向上につながり、本人だけでなく企業側にも大きなメリットをもたらすことがわかった。
初めての子どもを出産して職場復帰する親は、気の遠くなるような数多くのロジスティクスの困難にぶつかる。彼女たちは、保育所への送り迎えや、子どもの病気に関わるやっかいな問題を切り抜けながら、しばらく離れていた仕事を再開することになる。
なかでも、多くの女性が直面しながらも、あまり表立って語られない難題がある。職場での搾乳だ。
米国では2010年から、女性従業員に搾乳のための時間とスペースを提供することを、雇用主に法律で義務づけている。だが現実には、職場での搾乳は難しい、あるいはできないという話は、あとを絶たない。
女性はいつのまにか、車の中や備品収納庫、あるいはトイレへと追いやられている。企業が専用の搾乳室を設置しても、場所が遠かったり、必要なときに使用中だったりする。場所の問題はともかく、次から次へと続く会議の合間に搾乳の時間を確保できずに苦労している。
母乳が赤ん坊の健康によいことは、以前から研究で明らかにされているが、授乳がフルタイムで働く女性に与える影響、そして彼女たちを雇用する企業に及ぼす影響については、ほとんどわかっていない。
我々はその答えを出すために、2つの研究を実施した。その結果、快適に搾乳できる時間と場所を提供すれば、女性にも企業にもメリットがあることが明らかになった。