
組織のパフォーマンスを上げるために、成果に見合う報酬を提供したり、従業員特典を与えたりすることは効果的であろう。だが、それだけで十分とは言えない。特に地味で過酷な作業を要求する場合は、従業員が自分たちの仕事にプライドを持てるよう工夫することが重要だと筆者は指摘する。
先日、私は顧問を務めるウェイクフォレスト大学を訪ねた。米国ノースカロライナ州ウィンストン・セーラムにあるキャンパスはにぎわっていた。天気がよかったし、大学のフットボールチームが全米トップ25に入ったばかりだった。もっとも、キャンパスに広がる温かい感情の大半は、大学の教員と施設管理の職員が出演した、大規模なダンスイベントが成功した高揚感だった。
まさに高揚感あふれるイベントだった。3夜にわたり、守衛や造園師、電気技師、工事作業員など70人近くがキャンパスの最も広い中庭でダンスを披露し、学生や教員、卒業生、近隣住民など数千人が拍手喝采を送った。芝刈り機やトラック、はしご、ほうき、ハンマー、ドリルも総動員のシルク・ド・ソレイユだ。
「フロム・ザ・グラウンド・アップ(とことん楽しもう)」と銘打ったこのイベントは、華やかであり異例だった。キャンパスで最も華やかではない(少なくとも最も目立たない)仕事をする人々が、コミュニティの人たちを喜ばせる能力と創造性とユーモアを披露したのだ。
さらに、彼らは自分の仕事に対する誇りも披露した。それこそ、彼らにとってこのイベントが重要な意味を持つ理由であり、あらゆる分野の組織にとって不朽の教訓を物語っている。
今日では、どこを見ても競争が激しい環境で、要求されることは厳しくなるばかりだ。したがって、あらゆるレベルの人が、特に現場の最前線で働く人が、日々真剣に最善のパフォーマンスを発揮しなければならない。
そのために昇給が大きな動機付けになることは間違いないし、私も大賛成だ。しかし、人々のパフォーマンスを高めたいと本気で思うなら、何よりも、彼らにプライドを持たせなければならない。自分のやっていることを心から信じるとき、人は優れた成果を出せる可能性がはるかに高くなる。
著名な経営コンサルタント、ジョン R. カッツェンバックの著書Why Pride Matters More Than Money(プライドが金より大切な理由)(未訳)は、そのタイトルにメッセージが要約されている。仕事に対するプライドは「有意義な努力を絶えず追求する」中から生まれると、カッツェンバックは言う。このような「内因性のプライド」が、競争相手とは異なる「効果的な顧客中心の振る舞いを促しながら」「組織の文化を構築する」のだ。
一方で、「利己的な、あるいは物質的利益を優先させる」コミットメントは、「短期的かつ一時的でリスクが高い」とも、カッツェンバックは指摘する。そのようなところからは、「長期的なサステナビリティ」を築く「感情のコミットメント」は生まれない。
カッツェンバックが示す例の多くは、マッキンゼーのコンサルタントやマイクロソフトのエンジニアなど、一流のパフォーマーだ。しかし、めったに注目されることがない、現場で働く人々にとって、プライドは最も強力な動機付けになるかもしれない。少なくとも、記憶に刻まれる経験になることは確かだ。