
自分の成功を誰からも期待されていないとき、どのような反応を示すだろうか。筆者の調査によると、意気消沈してしまうどころか不利な状況を力に変えて、より高いパフォーマンスを上げることが示された。ただし、「負け予想」をモチベーションと成果につなげるためには、いくつかの条件があることも判明した。
自分の成功を人が信じてくれるとは限らない。プロジェクトリーダーをやるのは無理だと上司に思われたり、そのビジネスアイデアは物にならないと投資家に言われたり、次の4半期で不振に陥るとアナリストに予測されたりする。
「失敗すると思われている」と感じたとき、人はどうなるのだろうか。筆者が実験したところ、このような「負け予想」をされることが動機づけとなり、人はその相手――特に信用できない相手や間違っていると感じる相手――を見返そうとして、結果的にパフォーマンスを上げていることがわかった。
実施した実験の一つでは、米国のある消費財メーカーの従業員371人に対し、「どの程度、人から期待・評価されていないか」を質問した。7週間後、従業員の上司にその仕事ぶりを評価させた。
すると、人から期待されていないという体験が、従業員自身の成功に対する期待を差し引いても、本人のパフォーマンスの重要な予測材料になることがわかった。言い換えれば、「成功すると思われていない」と感じていた人が、上司から仕事ぶりを高く評価される傾向が見られた。
この結果により、負け予想と、企業における仕事の成績との間に正の相関関係があることがわかった。その因果関係を、よりコントロールされた環境で評価するために、さらなる実験を行った。
今回は、オンラインワーカー330人に、パソコンの画面上を高速で移動する円をクリックするというタスクを実行してもらった。そして、その作業ぶりを観察している人物がいることを告げた。15秒間の練習後、誰とは知らせずに観察者からのメッセージとして、期待薄、期待大、その中間の3パターンのいずれかをランダムに伝えた。
その後、5分間そのタスクを実施させた。好成績を上げるには、それなりの努力と集中を要する。結果は、期待薄と言われた人が期待大・中間の人を抑えて、最も成績がよかった。