これはすなわち、チームの成績を高めるためには、期待をかけないほうがよいということを示すのか。もちろんそうではないが、自分自身やチームのやる気を引き出すために覚えておくべきいくつかのポイントを、これらの結果が示唆している。

 第1に、自分の成功に役立つスキルや資質を見極めて、自信を培うこと。筆者の調査のすべてで被験者は必要なレベルの自信を持ち、期待されなくてもそれを維持した。リーダーたる人物は、いくら他の人が否定しても、自分は部下の成功を信じていることを部下に知らせるのが重要だ。それをやる方法の一つは、従業員の自信を培い、成功を後押しするためにリソースや教育を提供することだろう。

 第2に、期待されないときに意欲を持ち続けるには、その評価が信用できない理由を考えることだ。なぜ、自分に実力や成功する理由があることを正しく認識してもらえないのか。リーダーは、自分が他の人の負け予想を信用できないと思っていることを、部下にわからせることが重要である。過去の予想が間違っていたことを指摘してまでも、他人の信用度を落とすべきだ。

 第3に、相手を見返そうとするのは、諸刃の剣であることを肝に銘じること。負け予想は、人を見返そうという欲求を呼び覚ますが、その意欲がパフォーマンスを上げるか下げるかは、相手の評価にどれだけ信憑性があると思うかにかかっている。信用できる観察者がいたときには、負け予想を見返そうとして成績が下がった。緊張しすぎた可能性がある。

 予想が信用できるときに部下を成功させるには、見返そうとする意志だけでは不十分かもしれない。見返そうとすることが緊張を招いたり、目の前のタスクを成功させるのに必要な集中力を阻害したりしないように、手段を講ずる必要がある。緊張をワクワク感に換え想定される失敗に備え仕事に取り掛かる前のルーチンをつくって実践することで、見返そうとする際に生じる緊張に対処できることが、これまでの調査で示されている。

 世界は、誰にも期待されなかった人が逆転勝利する、心温まる話に溢れている。筆者の研究も、成功を期待されていないと感じている人が、もっと成功できることを示唆している。そのためには、人の評価を鵜呑みにせず、見返そうという意欲をよい仕事をするパワーに転換することが大切だ。


HBR.org原文:The Upside of Being an Underdog, January 14, 2020.


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