メンタルヘルスについて学ぶ
鬱に苦しむ人はまず人事部に、仕事の調整について相談すると思うだろう。しかし実際は、チームのメンバー(あるいは同僚)に、最初に打ち明けるものだ。
鬱に苦しむ部下は、何の前触れもなくあなたに相談するかもしれない。そこで、前もって鬱とその症状について学んでおく必要がある。鬱は、興味の喪失、エネルギーの減退、自尊心やセルフコントロールの低下、睡眠障害、集中力の欠如などの症状を伴う。
鬱の症状を理解したら、仕事のパフォーマンスに及ぼす問題や、部下が希望しそうなことの予測もつくだろう。
柔軟なスケジュールを認める
多くの企業は朝9時~夕方5時が基本的な勤務時間だ。しかし、鬱に苦しむ従業員は、少し遅く出勤したいと希望するかもしれない。
鬱は睡眠障害を伴う場合が多く、寝すごす、寝つけない、熟睡できないなどの問題がある。したがって、勤務スケジュールの調整は理にかなったサポートであり、研究でも効果が裏づけられている。
1980年代から現代まで数多くの研究によると、柔軟な勤務スケジュールは、実際に生産性を向上させ、組織への帰属意識を高め、人材の流出を防ぐと考えられている。
専門家によると、柔軟な勤務スケジュールには2つの留意点がある。まず、必要に応じて「コアタイム」や「コアデイ」を設定し、チームのメンバー全員がオフィスにそろう時間をつくる。鬱の人はパターン化された振る舞いが効果的な場合も多いが、自分でパターンをつくることが難しい。そこで、本人の状況に繊細に対応しながら、時間を調整することで手助けできる。
次に、鬱の人と、あなたやチームのメンバーとの交流を途絶えさせないこと。本人が交流を避けないように注意する。内にこもると、鬱の人がすでに感じている孤独を助長させるだけだ。
鬱の人は一人きりになると、鬱の否定的な影響ばかり考えがちだ。これは状況を悪化させる。
そのような傾向があれば、一歩踏み込んでみよう。このときに重要なのは、判断を下すのではなく、サポートする姿勢で手を差し伸べることだ。職場での社交的な関係が、鬱を和らげるときもある。上司や同僚との深い人間関係は、鬱を軽減しやすいだろう。
仕事の範囲を簡潔にする
鬱に悩む人は、仕事の量が多すぎる、あるいは仕事が複雑すぎると思っているかもしれない。鬱は認知機能に影響を及ぼしうる。そして、認知機能は睡眠不足の影響を受ける。
上司としては、たとえば大きなプロジェクトを小さなタスクに分割する。より小規模で管理しやすいタスクを与えられると、成功体験が増えて自信がつく。
鬱は、脳の報酬のメカニズムの減退とも関連がある。上司であるあなたが、部下の成功の認識を強化できると、より望ましい。成功を重ねるうちに、仕事における肯定的な経験が増えて、より頻繁になる。
それらの経験が、自分の環境に対する理解を変え、肯定的な予測が高まる。「勝利」の経験が、これからも与えられたタスクを達成できるという自信を強める。