
多くの組織がリーダーシップ開発に多額の投資を行なっている。にもかかわらず、そのほとんどが大した成果を上げられていない。筆者らは研究を通じて、それはリーダーシップの基盤となる属性、すなわちマインドセットの開発を軽視しているからだと指摘する。本稿では、リーダーに不可欠な4つのマインドセットを明らかにする。
世界中の組織が総額約3560億ドルをリーダーシップ開発の取り組みに投じている。にもかかわらず、人的資本の調査分析を行うブランドン・ホール・グループが2013年に329の組織を調査したところ、そのうち75%の組織が、自社のリーダーシップ開発プログラムはあまり効果的ではないと評している。
企業はなぜ、リーダーシップ開発費に見合う効果を得られずにいるのだろうか。我々の2019年末の研究によると、その理由は、たいていのリーダーシップ開発の取り組みがリーダーのある属性を無視していることによる。リーダーがいかに考え、学び、行動するかの基盤となっている属性、すなわちリーダーのマインドセットである。
マインドセットはリーダーの心的レンズであり、目の前の状況を把握し、切り抜けるために、どのような情報を取り入れて使うかを決める。端的に言えば、リーダーが何を、どんな理由で行うかを決定するのがマインドセットである。
たとえば、2人のリーダーが同じ状況に遭遇(部下と意見が食い違う、など)したとき、対処法や反応が著しく異なることがある。その理由は、マインドセットの差異として説明できる。一方のリーダーは、その状況を自分の権威の前に立ちはだかる脅威と見なすかもしれないが、もう一方は、学習し、さらに成長する機会と捉えるかもしれない。
リーダーシップ開発に取り組む際にマインドセットを無視してしまうと、この事例のように、リーダーたちが問題や機会をどのように捉え解釈するのかを見落とすことになる。
マインドセットがそれほど重要ならば、リーダーたちはどのようなマインドセットを培えばよいのか、という疑問も湧いてくるだろう。我々の最近の研究では、人々が持つさまざまなマインドセットを理解すべく、広範にわたる社会科学の研究にあたった。
そうした中で、4組のマインドセットが浮かび上がってきた。他人とうまく交わる能力や変化にうまく対応する能力、リーダーシップを発揮する能力に大きな影響を及ぼすと見られるのは、以下の4組のマインドセットである。