
従業員同士のコミュニケーションを強化することは、チームの生産性を上げたり、無用なトラブルを避けたりする効果が期待される。ただし、上司と雑談する機会が昇進のスピードを左右し、かつ、その恩恵を受けられるのが男性上司と男性部下の間柄に限られるとしたら、話はそう単純ではない。筆者らの研究によると、この現象は実際に起きており、男性同士の「たばこ休憩」はこのジェンダーギャップをいっそう助長していると指摘する。
会社は社交の場だ。従業員は上司とコーヒー休憩を取り、ランチを食べ、仕事の後に一杯飲み、同じスポーツチームに属していることさえある。会社が、こうした交流を奨励することも多い。チームの結束が強くなって成績が上がり、いざこざが減ると期待しているのだ。
だが、こうした交流が、あなたのキャリアに影響を与える可能性を考えたことがあるだろうか。上司とコーヒーを飲んだり、ファンタジー・フットボール(シミュレーションゲーム)をやったりすることが、自分の昇進を左右するなんてことがあるのだろうか――。
私たちは最近の研究で、上司との雑談は、部下のキャリアに重要な影響を与える可能性があることを発見した。同時にこれは、女性の昇進には不利に働くこともわかった。
世界中の企業における昇進のジェンダーギャップを考えてみてほしい。マッキンゼー・アンド・カンパニーの調べによると、米国では、新入社員レベルの従業員に女性が占める割合は48%だが、中間管理職になると38%、幹部レベルでは22%に低下し、CEOレベルでは5%にまで落ち込む。学歴など、ジェンダーギャップが縮小してきた領域も多いが、昇進におけるジェンダーギャップは、いまも遅々として改善していない。
経験的な説明では、その一因として、男性には権力のある男性と雑談をする機会が女性よりも多くあることが挙げられてきた。いわゆる「オールド・ボーイズ・クラブ」、つまり男性だけのネットワークだ。一方、職場のネットワークづくりから排除されており、仕事の後の社交に参加できないと感じる女性は81%にも上る。だから女性は、自分の昇進を後押ししてくれる権力や影響力を持つ人物との交流が限られてしまう。