そこで雑談に話が戻ってくる。男性上司を得た男性従業員の昇進スピードが速くなるのは、上司と気楽に雑談ができるからなのか。

 この仮説を裏づけるらしき論文は数多く存在する。ただし、上司が男性であるがゆえのアドバンテージは、すぐに表れるわけではなく、約1年かかる。

 これは雑談の性質を考えると合点がいく。雑談によって男性マネジャーとの間に信頼関係を構築し、その後押しを得るまでには、一定の時間がかかるのだ。また、男性マネジャーを得た男性従業員が、平均以上の昇進を見せるのは、カスタマーサポートのスペシャリストなど、社交がより一般的なポジションでだけ起きることもわかった。

 こうした雑談効果をより直接的に調べるために、私たちは、従業員とマネジャーがどのような社交をするのかも調べたデータを集めた。

 男性上司の下についた男性従業員は、ほかのマネジャーたちとの交流も増えたのか。データによると、答えはイエスだ。男性上司がやってきてから、男性従業員はマネジャーと一緒に休憩を取ることが大幅に増えた。また、マネジャーと一緒に休憩を取る時間が長い従業員ほど、上司の好み(お気に入りのスポーツチームなど)をよく知っている可能性が高く、こうした社交がお互いをよりよく知るのを助けていることがわかった。

 この男性上司と男性従業員の組み合わせがもたらすアドバンテージは、永久に続く可能性がある。男性は男性マネジャーの下では昇進する可能性が高いから、みずからもマネジャーになる可能性が高く、やがて自分の男性部下に同じ特典をもたらす可能性が高い。私たちが単純計算したところでは、このアジアの銀行では、昇進のジェンダーギャップの3分の1が、こうした男性同士の雑談の結果によるものだ。

 では、性別以外に、上司との雑談を気軽にできるようにする要因はあるのか。男性ならば誰でも「オールド・ボーイズクラブ」に入れるわけではないだろう。

 そこで私たちはたばこ休憩に注目して、このことを調べた。

 たばこを吸う男性従業員が、たばこを吸う男性マネジャーの下につくと、一緒にたばこ休憩を取る時間が増えるのではないかと、私たちは考えた。この仮説も、調査データによって確認された。

 最も重要なことに、たばこを吸う男性上司を得た男性従業員は、たばこを吸わない同僚や、たばこを吸わない男性上司を得た男性従業員よりも昇進する可能性が高かった。喫煙がもたらす恩恵のタイミングや大きさは、男性従業員が男性上司の下についたことから得る恩恵のそれと似ていた。