対象となったのは、さまざまな業界のマネジャーと、MBA取得課程の学生の計168人。このうち52%が女性で、40%が男性だ(8%は性別の回答なし)。年齢層は20~29歳が41%、30~39歳が39%、40歳以上が20%。政治的アイデンティティは以下の通りだった。

政治的信念:
非常にリベラル:19%
リベラル:23%
中道:30%
保守的:18%
非常に保守的:9%

支持政党:
民主党:34%
独立系:50%
共和党:16%

 調査は、架空の企業ジョーンズに対する回答者の考えを聞く形で行われた。ジョーンズは中規模のフードサービス企業だとし、その商品、ビジョン、業績、福利厚生(医療保険や確定拠出年金、無料の朝食など)を説明した。ジョーンズは、非政治的な慈善活動(ボーイスカウトやハイウェー清掃活動の支援や、従業員の募った寄付金に同額を拠出する活動など)も行っている。

 私たちはまず、回答者の基本的な考え方を明らかにする予備的な質問をした。消費上の好みや雇用の好みのほか、ビジネスとは無関係の活動が企業イメージにどのような影響を与えると思うか、などだ。具体的な質問としては、「このような会社の商品を買いたいと思いますか」「このような会社で働きたいと思いますか」「この会社はその価値観に本気で取り組んでいると思いますか」などだ。

 そのうえで、回答者の半数には、ジョーンズは非常に保守的な価値観を持つと告げ、残りの半数には、ジョーンズは非常にリベラルな価値観を持つと告げた。ジョーンズが擁護する(または擁護しない)大義も知らせた。これには人工妊娠中絶権、銃を持つ権利、性的少数者の権利、これまでの政治献金が含まれる。CEOの個人的な価値観も示した。

 こうした前提を説明したうえで、上述の質問のほか、ジョーンズのアドボカシーは純粋なものだと思うか、それとも顧客を獲得するためのマーケティング戦略にすぎないと思うかなどを聞いた。

 その結果は驚くべきものだった。

 ジョーンズは保守的価値観を持つと告げられた回答者は、同社に対する評価が大幅に低かった。ジョーンズに対する好感度は33%下がり、社会的責任や自社コミュニティにあまり力を入れておらず、利益もさほど上がらないと評価された。ジョーンズのプロダクトを購入する可能性は25.9%低下し、ライバル社から購入する可能性は25.3%上昇した。さらに、求職者がジョーンズの求人に応募する可能性は43.9%下がった。

 では、ジョーンズがリベラルな価値観を持つと告げられた回答者は、ジョーンズを高く評価したかというと、そうではなかった。リベラルな価値観を持つからといって、同社の活動に対する評価は上昇も低下もしなかったのだ。

 それでも、民主党支持者と共和党支持者の間で比較すれば、ジョーンズの価値観を知った後の評価に変化があるのではないかと、私たちは考えた。すると、共和党支持者の間では、ジョーンズが保守的な政治活動に関与していようが、リベラルな政治活動に関与していようが、同社に対する評価は変わらなかった。

 ところが民主党支持者、つまりリベラルな価値観を持つ回答者の間では違った。ジョーンズがリベラルな活動に関与している場合は、回答者の評価に変化がなかったのは前述の通りだ。その一方で、ジョーンズが保守的活動に関与しているとき、同社の活動に対する好感度が33%低下したのは、もっぱら民主党支持者の低評価に牽引されたものだったことになる。

 もう1つ意外だったのは、年齢層による態度の変化は、さほど見られなかったことだ。20代、30代、40歳以上で結果を見たところ、唯一目立ったのは、40歳以上の参加者は、ジョーンズの政治活動を知ると、その商品を購入する可能性がやや低下する程度だった。

 参加者の態度に大きな違いが見られたのは、性別による結果を見たときだった。ジョーンズが政治的活動に関与していると聞かされると、同社に対する高感度は男女ともに低下した(男性はマイナス19.5%、女性はマイナス19.4%)が、女性は同社の社会的責任に対する取り組みをより低く評価した。消費行動への影響にも男女差が表れた。政治的活動を知ると、女性はジョーンズの商品を購入する可能性が約10%も低下した。

 さらに、まったく予想外の発見もあった。

 政治的アドボカシーは、企業(ジョーンズと実在する複数の企業を例に挙げた)の純粋な信念に基づくものだと思うか、それとも同様の考えを持つ顧客の支持を獲得するための戦略だと思うか。この質問に対する答えは、はっきり二分するだろうと私たちは予想した。ところが半数以上の回答者は、企業はそうした政治的信念を純粋に抱いていると答えると同時に、顧客の支持獲得を狙って打ち出した戦略だと答えた。