この調査結果は、全体として、企業の支持表明が受け入れられるものと、受け入れられないものについて、社会的シフトが起きていることを明らかにしている。
企業のリベラルなアドボカシーが、良いとも悪いとも見なされないという調査結果は、それが一般的なビジネス慣行だと思われていることを示唆している。率直に言って、私たちはこのドライな結果に驚いた。
現在、教会や国家や企業など、社会の根幹を成す機構に対する信頼は着々と衰えている。これは回答者の75%を占めるミレニアル世代で、とりわけ顕著な傾向だ。ということは、政治的アドボカシーは、ビジネスモデルの一部と言っていいほど、「普通のこと」と見なされるようになったのかもしれない。
回答者はまた、政治的アドボカシーは、企業が顧客とのつながりを強化して、自社ブランドを売り込む手段だとも見なしていた。アドボカシーによってターゲットオーディエンスにアピールすることは、もはや消費者を操作する手段ではなく、一般的なビジネス慣行と見なされているのだ。
商売に政治色は御法度という考え方は、とうに昔のものになったのかもしれない。
ただし、例外もある。女性は男性よりも企業の政治活動にネガティブな反応を示した。これには多くの原因が考えられる。もしかすると、女性が大きく関わる進歩主義的な価値体系が関係しているため、より敏感なに反応するのかもしれない。理由はどうあれ、消費財の大半は女性が買い手であるという事実や、社会における女性の活躍拡大を考えると、企業はみずからのアドボカシーが業績に影響を与る可能性があることを意識すべきだろう。
総じて言えるのは、私たちの調査回答者は、従来考えられてきたほど、企業のアドボカシーに影響を受けなかったことだ。それが実際の消費行動の大きな牽引役になるかどうかは、まだわからない。ただ、あるエピソードが参考になるかもしれない。
ジョージ・ワシントン大学には、5つのレストランが入った学食がある。このうち4つは個人所有かスモールチェーンだ。残りの1つは、チキンフィレサンド専門チェーンとして有名なチックフィレ(Chick-fil-A)である。
チックフィレは、日曜日を定休日にするなど保守的な価値観を実践していることで知られ、保守的な政治家に政治献金もしている。一方、ジョージ・ワシントン大学は、全米でも有数のリベラルな大学だ。しかし学食では、ほかの4つのレストランに行列ができることはまずなくても、チキンフィレにはいつも行列ができている。30人並ぶことも少なくない。美味しいサンドイッチは、価値観に勝るということなのか。
そうかもしれないし、そうでないのかもしれない。
1つだけはっきりしているのは、ビジネス環境が大きく変わりつつあることだ。米国が新たな選挙のシーズンに入る中、企業はそれにどのように関わるか考える必要がある。政治的活動のインパクトは、誰もが感じるものではないかもしれないが、インパクトが存在することは確かなのだから。
HBR.org原文:How Do Consumers Feel When Companies Get Political? February 17, 2020.
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