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新型コロナウイルス感染症から従業員を守るために、在宅勤務を命じる企業が増えてきた。ビデオ会議を導入する会社は多いが、集中力を保つのは容易ではない。家事やペットの世話をしながら、片手間で話を聞き流す人すらいるだろう。参加者をエンゲージさせるには、技術を身につける必要がある。本稿では、ビデオ会議の生産性を劇的に上げる5つのルールを紹介する。


 最近は、どんなミーティングでも参加者の注意を引きつけるのは難しい。ビデオ会議となれば、なおさらだ。

 自分の考えを10分近く説明したところで、参加者の意見を聞いたら、「あー、ちょっとよく聞いていませんでした」などと言われたりする。その本音は、「猫のシャンプーをしていて、まさか意見を求められるとは思わなかった」ということかもしれない。

 たしかに、ほとんどのミーティングはつまらない。なにしろ参加者にとって、エンゲージする責任はゼロまたは極小だ。これが本物の会議室なら、ボーッとしている参加者に、ぎろりと睨みを利かせることもできるし、参加者も、せめて関心があるふりをするだろう(たとえスマートフォンを眺めていても)。

 だが、それができないビデオ会議では、古典的な「技」を身につける必要がある。つまり参加者の自発的エンゲージメントを生み出す方法だ。言い換えると、参加者が完全にエンゲージする機会をつくる必要がある。

 おおまかに言って、ミーティングを開く理由は4つある。他人に影響を与えること、意思決定を下すこと、問題を解決すること、そして人間関係を強化することだ。

 いずれも積極的なプロセスなので、受け身の参加者がミーティングで質の高い役割を果たせるはずがない。したがって、ビデオ会議であれ、実際に人が集まる会議であれ、自発的なエンゲージメントが有効なミーティングの前提条件になる。

 筆者たちはここ数年、なぜビデオ会議は参加者を昏睡状態に陥らせるのかを解明しようとしてきた。その過程で、よりよい結果をもたらす5つのルールを発見し、検証してきた。

 ある実証研究では、本物の会議とビデオ会議それぞれ200人の参加者の経験を比較した。そこで5つのルールを実践すると、ビデオ会議の参加者の86%が、本物の会議と同じか、それよりも高いエンゲージメントを示した。こうして私たちは、これまでに1万5000人以上の会議参加者にこのルールを実践してきた。

 その仕組みを紹介しよう。

 たとえば、ラウルという中級管理職がいたとする。ラウルは、北米と南米の各地に散らばる同僚16人とのビデオ会議で、15分間のプレゼンをしようとしている。目標は、各地域の顧客からグローバルな販路拡大につながるチャンスを見出し、その実現に向けて協力するよう仲間を説得することだ。

 ラウルは、自分が一方的に話して、参加者が受け身になることを避けるために、18枚のスライドを使って仲間をエンゲージさせようと思っている。そこで、ラウルが実践すべき5つのルールは、次の通りだ。