(3)隠れ場所はないルール

 研究によると、地下鉄で心臓発作を起こした人が乗客の助けを得る可能性は、乗客の数が多いほど低下する。社会心理学者が「責任の分散」と呼ぶ現象である。全員に責任があると、誰も責任を感じない。

 ビデオ会議でこのような事態を避けるためには、参加者に積極的にエンゲージできるタスクを与えて、隠れる場所をなくすことだ。そこで参加者を2~3人(最大)のグループに分けて、迅速に解決できる問題を与える。各グループがメンバー同士で話し合える手段(テレビ会議やスラック・チャンネル、チャットアプリ、音声ブレークアウトなど)を用意しておこう。ビデオ会議のプラットフォームにブレークアウト機能がある場合は、それを積極的に活用しよう。

 重要なのは、グループ活動の時間を限定的にして、シンプルで明快なタスクを与えること。たとえばラウルは、3分ほどしゃべったところで、「次のスライドには、みなさんのグループ分けを示してあります。この分科会で2分間、グローバルな領域で残念なことを挙げてください。過去1年間に、私たちがもっと協力していれば、もっと大きな契約をまとめられたのにと思うクライアントはいますか」という聞き方をしてもいい。

 参加者全員に答えをチャットスペースに書いてもらったり、1人か2人を指名して、その事例を発表してもらったりもいいだろう。

(4)MVPルール

 データが箇条書きにされたスライドを延々と見せられることほど、参加者のエンゲージメントを確実に低下させる方法はないだろう。参加者が、いかに頭がよくて、洗練されているかといったことは関係がない。エンゲージメントの確保を目指すなら、事実とストーリーをミックスする必要がある。

 そこで私たちは、必要最低限のパワーポイント(ミニマム・バイアブル・パワーポイント:MVP)を推奨している。つまり、伝える必要がある最低限のデータを厳選して、グループをエンゲージさせるのだ。それ以上、1枚でもスライドを増やしてはいけない。

 このルールの副次的効果は、プレゼン当事者も参加者にエンゲージさせることだ。スライドが多すぎると、「最後まで行かなければ」という思いが先行してしまう。

 ラウルの持ち時間が18分だとしたら、15枚のスライドは多すぎる。1枚か2枚で要点を示せるようにすべきだ。そのうえで、上記のルール(1)~(3)のタスクに必要なスライドを追加しよう。

(5)5分ルール

 1つのタスクが終わったら、5分以上あけずに、次のタスクを参加者に与えること。ビデオ会議の参加者には、気が散る誘惑が身の回りにあふれている。有意義なエンゲージメントの種を継続的に提供しなければ、彼らはまたたくまに気楽な観察者の立場に引っ込んでしまい、そこから引っ張り出すのは難しくなる。

 ラウルの15分間のプレゼン中には、明確で意義深いエンゲージメントのチャンスが2~3回設けられるはずだ。たとえば、プレゼンの締めには、みんなで作成したオプションのリストを示して、何から着手するべきかを投票で決めることができるだろう。

 どのような会議を引っ張るのであれ、本来ならこれらのルールは、すでに身につけているべきことだ。だが、参加者が物理的には目に見えない場所にいて、その心がいくらでも自由にさまよえるビデオ会議では、エンゲージメントの確保は一段と重要な課題である。

 ここに紹介した5つのルールに従えば、ビデオ会議の生産性はたちまち劇的に高まることだろう。


HBR.org原文:How to Get People to Actually Participate in Virtual Meetings, March 09, 2020.


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