HBR Staff/miniloc/Getty Images

ゴールドマン・サックスのCEOがダボス会議で、「女性が一人もいない会社については、上場の幹事を引き受けない」と宣言したことは話題を呼んだ。すべての企業が男女同権やダイバーシティを推進することは不可欠だが、たとえ善意のルールだとしても、この取り組みは的外れであり、マイナスの影響をもたらす可能性すらあると指摘する。


 取締役に女性または非白人が一人もいない会社の新規株式公開(IPO)は引き受けない――。ゴールドマン・サックスが、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でそんな宣言をして、大きな話題になったのは1月のことだ。

 デービッド・ソロモンCEOは、次のように語った。「米国と欧州では7月1日以降、取締役候補に多様性、とりわけ女性が一人もいない会社については、上場の幹事を引き受けない」

 上場企業でも、女性取締役はゼロではないにしても、非常に少ない。それでもS&P500の全500社には女性取締役が1人はおり、ラッセル3000採用企業の女性取締役の割合は20%程度だ。

 この傾向は、未上場企業ではもっとはっきり見られる。「未上場で資金調達量がトップクラスの企業」を複数調べた研究によると、60%が女性取締役ゼロで、全体として女性取締役の割合は7%だった。

 こうした未上場企業のうち、どのくらいが上場を目指しているのかはわからない。しかし最近大いに話題になったIPOの試みは、男性取締役しかいない未上場企業は、大きな問題を抱えている可能性があることを示した。

 その最大の例はウィーワークだろう。同社が昨年、米国の証券当局に提出したIPO申請書では、「インクルーシビティの文化」があると述べていたが、そこに記載されていた取締役は全員男性だった。これが問題視されて、女性取締役が1人加えられたが、その後、ウィーワークにはもっと多くの問題が明らかになったことは、広く報道されている通りだ。

 ゴールドマンの新しいルールは、善意から生まれたものかもしれない。しかし筆者は、エネルギー業界という、男性が最も支配的な業界の一つで性差撤廃を目指してきた企業の創業者として言いたい。ゴールドマンのルールは的外れであり、かえってマイナスの影響をもたらす恐れがある、と。