子どもが1歳3ヵ月になったとき、セーラは再び仕事を始める準備ができたと感じ、職場に復帰することにした。もう乳離れは終わっていたから、オフィスで搾乳をするための準備は必要ない。

 また、スウェーデンには素晴らしい公立の託児制度があって、1歳から必ずどこかに子どもを預けられるようになっている。料金も非常に手頃だ。低所得家庭は無料で、最も富裕家庭でも月額1287スウェーデンクローナ(約1万3700円)が上限である。セーラは育児休業中にいくつかのリストに名前を登録しておいたところ、2ヵ月後には第1希望のプレスクール(自宅に最も近かった)に息子を入れることができた。

 育休の一環として、セーラは1週間のインスコーリング(inskolning)に参加した。これは子どもが新しい環境に適応しやすいように、親がプレスクールに同伴する制度だ。

 職場復帰した初日、同僚たちは彼女を暖かく迎えてくれた。スウェーデンでは、「子どもを産むと、ポジティブな目で見られるようになる。たとえそのために、仕事を1年以上離れることになったとしても」と、セーラは言う。

「より一人前の人間として扱われる。私の同僚の多くが子どもを持っていて、母親になった私をよくサポートしてくれたことも大きい。上司や同僚からネガティブに見られていると感じたことは、一度もない。この国では、男女とも1年近くの育児休業を取るのが普通だ」

 職場復帰したわずか2ヵ月後、セーラは第2子を妊娠していることに気がついた。そこで、またも妊娠3ヵ月を過ぎたあたりで上司に知らせると、またも上司は祝福してくれた。こうして2018年5月に第2子を出産した。

 育児休業が11ヵ月目に入ったとき、セーラは別の会社のヘッドハントを受けた。面接を受け、採用通知をもらい、約3ヵ月後に転職することにした。

 1年半の育児休業が終わると、セーラは第2子を長男と同じプレスクールに預けて、新しい会社に通い始めた。ただし最初は、就労時間を80%(週32時間)に抑えることにした。スウェーデンの働く親は、子どもが8歳になるまで労働時間を75%(週32時間)まで短縮することができる。

 セーラは2人の子の母親として、収入を得ることと、息子たちと過ごす時間のバランスをとりたかった。そこで、まず1年間は短縮スケジュールで働いてから、100%(週40時間労働)に戻すかどうか考えることにした。

 たしかに、3歳未満の子どもを2人抱えて働くのは楽ではない。セーラは転職後3週目に、筆者に電話をかけてきた。会社から地下鉄の駅に向かっているところだった。

 3歳の長男が熱を出したため、プレスクールに引き取りに行かなければならないと言う。夫は出張中。電話の向こうから、セーラの疲労感が伝わってきた。1歳の次男にうつらないかとヒヤヒヤしながら、長男を看病する長い夜を思うとげんなりすると言う。

 だが、ここでも、息子たちの面倒を見るための早退や病欠が、仕事に影響を与えるのではないかという心配はなかった。息子たちを世話するために仕事を休み、それについて補償を受ける法的権利があることを知っていたからだ。また、その権利を行使することで、上司や同僚に仕事への意気込みを疑われるのではないかと心配する気持ちは、いっさい浮かばなかった。