副業のスタイルをつくる
仕事の特徴、その仕事を選んだ動機、本業に近い仕事のメリットとデメリットなどを考慮して副業を選んだら、副業のスタイルを構築するうえで、いくつか重要な判断をしなければならない。具体的には、副業のペースの管理、副業の位置付け、本業のフィールドで副業をしていることを報告するかどうかを考える必要がある。
●副業のペースを決める
最初から規模を広げやすい副業もある。たとえば、ネットのアンケートに回答する数や、ライドシェアの運転手として配車のリクエストに対応する時間、ウーバーイーツで配達する回数は自分で調整できる。このような副業は、本業や仕事以外のスケジュールに合わせてペースを決めることは比較的簡単で、調整しやすい。
一方で、仕事量をかなり考慮しなければならない副業もある。たとえば、家庭教師、ドッグシッター、ベビーシッターなど、クライアントと関係を築いてルーチンを決める仕事は、時間をかけて「顧客リスト」をつくり、過剰な負担にならないように気をつけながら、持続可能な仕事の流れを見つけたい。対応が難しい長期の顧客を抱え込まないほうが、賢明かもしれない。
あるいは、フリーランスのイラストレーターやウェブデザイナーのように大きな成果物を出す副業は、差し迫った納期や不定期の注文など、重要な締め切りを伴う場合も少なくない。このように仕事量の変化が激しいと、週単位で一定のペースを保ちたい人には負担が大きそうだ。綿密な計画を立てて維持することを重視する人は、このようなフリーランスのリスクを避けたいかもしれない。
●副業とうまく付き合うか、いずれ本業にするか
私たちの調査では回答者の17%が、いずれ副業を本業にしたいと考えていた。そのような人は個人的な興味と重なる副業(ドローンによる撮影、木工、アート、執筆など)が多いが、そこから十分な収入は得ていない。それでも副業への長年の情熱が、仕事の選択やペースに関する決断を支えるだろう。
副業をいずれ本業にしたい人は、現在の本業よりも個人的に強い関心があり、かつ、生活を支えられるだけの収入を得られる可能性がある副業を選ぶ。副業の利点は、本業を脅かすほどの労力をつぎ込まない限り、本業の代わりとなるような仕事を試しながら、その規模を広げたり、すっぱりとやめたりと、試行錯誤できることだ。
●上司に副業を報告するか
副業は、本業以外の仕事をするという点で、多くの組織で利益相反や雇用契約違反と見なされる可能性がある。副業を始める前に会社の方針を確認して、何らかの違反にならないことを確認する。
ただし、会社の規約に違反しなくても、同僚や上司に副業を明かすことをためらう人もいるだろう。報告するかどうかの判断は、自分の組織や会社の文化を振り返り、副業のような機会を本当に受け入れているかどうかを理解すること。ほかにも副業をしている人がいるだろうか。彼らは職場で、自分の副業についてオープンに話をしているだろうか。
もう一つ重要なのは、上司との関係だ。あなたは上司を信頼しているか。上司はあなたを信頼しているか。副業について黙っていたら、その信頼を裏切る恐れがあるだろうか。
会社に報告すると決めたら、副業が自分と本業にもたらす恩恵や、本業への影響を最小限に抑える方法をしっかりと伝えたい。副業で身につけて磨いたスキルを本業で活かせることも、メリットの一つになる。たとえば、私たちの調査に参加したある女性は、副業のコンサルティングでクライアントに対応することが、本業の営業の仕事でいかに役に立つかを強調していた。
本業では得られないかもしれない、人生や仕事への全体的な満足度を副業が高めてくれることも、上司にアピールしたいメリットの一つだ。
私たちの調査の別の参加者で、フォーチュン100の人事部門で働く女性は、美しいジュエリーをつくってネット販売することを通して、本業ではできない形で自分の創造性を表現し、結果的に仕事と人生の満足度を高めることができた。私たちの調査では、副業は全体として、本業のパフォーマンスにプラスの影響を与えている。
上司としては、あなたが副業のせいで本業に集中できないと心配するかもしれない。しかし、私たちの調査では、本業の就業時間中に副業をしている人はほとんどいなかった。あなたもそんなことはしないと、上司に約束しよう。さらに、PCや事務用品など、会社のリソースを副業に使わないことも約束する。
副業のせいで本業に集中できないかもしれないという不安は、副業を予定通り遂行して目標を達成すれば、最小限にできる。
たとえば、エッツィーでハンドメイドの副業をするなら、週末に完成させるほうが、平日の夜を何日も費やすより、本業への影響ははるかに少ないだろう。あるいは、本業の出勤前と退社後にウーバーの運転手として働くより、大半の時間を運転に費やせる日に稼動したり、1日の目標額ではなく、朝だけ、あるいは夜だけの運転で稼ぐ目標額を決めたりするといいだろう。