副業の選び方

 幸いなことに、副業を考えている人にとって、いまの時代は選択肢が数多くある。どのくらいの収入を稼げるかということも間違いなく重要だが、仕事の特徴や本人の動機からも、副業を通じてどのくらい自信と充実感を得られるかを予想できる。

 ●仕事の特徴

 副業の充実度を高める要素は5つある。

 1つ目は、副業の自律性だ。スケジュールや意思決定、仕事のやり方の選択について、働く本人に自主性と自由を与えることから生まれる自律性は、より充実した経験につながる。同じように、タスクを最初から最後まで把握しやすい副業も、よりよい経験を生むだろう。

 実際、副業はこのような自主性を伴う場合が多く、ギグ・ワークの性質を考えると、独立して完結するタスクが多い。したがって、これらの特徴を持つ副業は比較的、見つけやすいはずだ。

 副業を選ぶ際に考慮したいほかの3つの特徴は、フィードバックがあること、意義を感じられること、スキルに多様性があることだ。

 フィードバックに関しては、自分のパフォーマンスに対して直接かつ明確な情報が提供される副業は、仕事の経験を向上させる。わかりやすい例では、リフトやウーバーは乗客からの評価や料金に上乗せされるチップが、即時のフィードバックになる。それに対し、ドッグシッターを仲介するローバーで犬の散歩を請け負う場合、パフォーマンスに対して即座に明確なフィードバックを得られにくく、充実感が低くなりやすいだろう。

 意義を感じやすい(すなわち、他人の生活や仕事に直接影響を与える)副業は、仕事から得られる充実感も高くなる。たとえば、ネット販売の副業は、仕事から直接的に深い意義を感じにくいかもしれないが、アバーンシッターに登録してベビーシッティングを請け負うと、意義のある仕事だという認識が高まりやすいだろう。

 多様なスキルが関係する副業は、自分の経験を向上させる。すでに持っているスキルだけでなく、伸ばしたいと思っているスキルにつながる仕事なら、さらに有益だ。たとえば、タスクラビットに登録して雑用などさまざまな仕事を引き受けると、ライドシェアの運転手の場合より、使うスキルも伸びるスキルも種類と幅が広がりそうだ。

 すなわち、自律性をもたらし、独立して完結するタスクで、フィードバックが早く、意義を感じやすくて、スキルに多様性がある副業は、より充実した経験につながり、自信とエンゲージメントを促進する。

 ●副業をする動機

 副業を求める理由はさまざまで、それらの動機が、副業で自信とエンゲージメントを経験する機会を増やす。

 多くの人にとって副業の動機は、収入増や安定を担保することなど、実用的な利益にある。私たちの調査では45%の人が、収入と評判のアップを、副業を持つ最大の理由に挙げた。

 それ以外にも、さまざまな理由がある。たとえば、副業を持つ最大の動機は、多様性と自律性が欲しいからだという人は34%いる。店のレジで働く人は、タスクラビットでさまざまな仕事を請け負って多様性を求めているのかもしれない。会計士はハンドメイドのマーケットプレイス、エッツィーでアーティストとしての自律性を経験したいのかもしれない。

 社会的な交流の機会を増やして人の役に立つことを最大の動機に挙げた人は7%いる。たとえば、社会的な交流を増やしたくてリフトの運転手を選ぶ。夜間のコミュニティカレッジで教壇に立って、人の役に立ちたいという人もいるだろう。

 副業に関するこれらの動機(収入と評判、多様性と自律性、社会的交流と利他的行為)が、仕事とその文脈をより能動的に決めたいという意志を強め、副業へのエンゲージメントを高めるようだ。

 ほかにも14%の人が、副業を持つ最大の動機として、仕事の安定と信頼を挙げた。たとえば、住宅ローンを滞納しないようにエアビーアンドビーで空き部屋を貸し出す人もいるだろう。

 これら4つの動機から、2つの重要な考察が導かれる。

 まず、副業の動機は、収入を増やすことにとどまらない。そして、お金を稼ぐことだけでなく、もっと幅広い動機を持つことによって、自分の動機に応えるために役割をつくり出そうという自主性が高まる。仕事を自分で形づくるというこの欲求が、働くことへの自信とエンゲージメントを高めるだろう。

 さらに、副業の動機が副業の性質と一致すれば、副業の経験は最高のものになる。たとえば、副業に社会的な交流を求める人は、オンラインのアンケートに答える副業は向いていないかもしれず、週に数回、夜にバーテンダーとして働くほうが合っているかもしれない。副業を選ぶ際は、自分が副業をする動機と、実際にそれらの動機が満たされそうかどうかを考慮するべきだ。

 ●本業と似たような副業にするか、違うことをするか

 本業が会計士なら、副業では個人の納税申告の代行が最適なのだろうか。本業と副業が似ていることの利点は、どちらの仕事も円滑に進められるスキルを持っていることだ。

 この点が一致していると、たとえば会計士が結婚式のカメラマンをするように異質な副業に比べて、2つの役割のマネジメントと切り替えがやりやすくなるだろう。ただし、本業と似たような副業は、仕事以外の時間になるはずのところに本業の経験を延長することになり、本業から離れるという感覚が制限されかねない。

 本業と似ている副業を持つことによって、本業から離れる時間が短くなると、自分の主な仕事から心身を回復させづらくなるかもしれない。むしろ、既存のスキルを活かしつつ、働き方に多様性が生まれるような副業を見つけるという意識が必要だ。