(1)2回は尋ねる

 あなたも私も、誰もが忙しい身だ。それでも、誰かに元気かどうかを2回尋ねてみる――相手が言うほど元気ではないと薄々感じたときは特に――と違ってくる。

 簡単に、「今朝、訊いたときは元気だって言っていたけど、何かおかしいと思ったから、もう一度訊きたい。本当に大丈夫?」などと言ってみる。尋ねた後は相手主導で、相手が打ち明けたいと思うところまで話を聞く。

(2)「元気?」以外に何か訊く

 相手が元気だと答えた後、「週末はいいことあった?」「昨晩は何をしたの?」 などと追加で質問をする。「大丈夫じゃないときは言ってくれる? 話を聞くから」と言ってみるのもよいだろう。

 それによって表面的な会話で終わらせるつもりがないことを、相手にわかってもらうといい(他のメリットもある。調査によると、確認の質問をすると好感を持たれる可能性が高くなる)。

(3)相手の生活周辺について覚えておき、気遣いを示す

 元気だと言われたら、「それはよかった。お父様が手術を受けると前に言っていたけど、お元気?」と言い、相手の返事を真剣に聞く。詮索ではなく、自分が気にかけていること、だから訊いているのだということが伝わるように尋ねる。

 そこで相手が話したいと思ったら、そう教えてくれるし、話したくないと思ったら、それも教えてくれる。よくわからない場合は「訊いても大丈夫?」や「話してみない?」と尋ねよう。

(4)ボディランゲージに注意し、やんわりと訊いてみる

 コミュニケーションには、バーバル(言葉)、ボーカル(声のトーン)、ビジュアル(ボディランゲージ)の3つの要素がある。「元気だ」と言われたとき、その言葉以外にも注意を向けよう。

 表情、姿勢、アイコンタクトなどを見逃さない。元気だと言いながら眉をひそめたり、肩をすくめたりするのは、言葉とは別のことを表している可能性がある。

 こう返してはどうだろう。「元気だって言ったけれど、こめかみを押さえているよ。何かあった?」。そして、ここでもプッシュはせず、話を聞くつもりがあることを伝える。

(5)自分が元気ではないときは正直に伝え、「弱さ」の手本を示す

 あなた自身、(元気ではないときでも)いつも元気だと答えているとしたら、自分が心を開いて正直になるチャンスも、他の人にその模範を示すチャンスも逃している。

 誰かに元気かと訊かれたら、すすんで本当のことを言おう。「告白すると、今日は調子がいまいちなんだ」「元気だと言いたいけど、いろいろ考えければならないことがあって」という言い方なら、オーバーシェアリング(個人的なことを打ち明けすぎ)にはならないだろう。

 これは、他の人の反応を見るチャンスでもある。もし相手が「それは大変だね。それにしても昨日のミーティングはひどかったね」と返してきたら、相手がまだあなたとオープンに話す気がないか、他に悩み事があるか、ちゃんと聞いていなかったのだろう。

 しかし、だからといって思いやりがないとか、素っ気ないからダメだと切り捨てないこと。あなたが手本を示そうとしている、相手に隙を見せるということは新しいスキルかもしれず、新しいスキルを身につけるのには時間がかかるものだ。

(6)心を開きやすい安全な状況をつくる

 人に心を開くように言うことと、心を開きやすい状況をつくることとは別のことである。あなたが口の固い、頼りになる人間であることをわかってもらうには、どうすればよいのだろうか。

 第1に、秘密を尊重し、カジュアルな会話であっても他人に話さないこと。第2に、相手の健康や幸せを本当に気遣っているのなら、相手に直接尋ねること。第3に、求められない限りアドバイスはしないこと。相手の役に立つと思ったとしても、そうすることがその人の主体性や自立性を奪う可能性がある。

 第4に、話を聞いて自分では収集がつかないと感じたら、一線を引くこと。たとえば、次のように伝える。「そんな大変なことになっていたんだね。他に誰か話を聞いてくれて、力になってくれる人はいないかな」

 最後に、あなたには打ち明けないという相手の意思を尊重するのも、安心できる状況をつくることにつながる。「あなたのプライバシーを尊重する。話したくなったら、いつでも話して。無理に訊くようなことはしないから」などと言おう。そして、詮索しないことで約束を守る(本当は訊きたくても)。

「元気だ」で終わらせることもできるが、それを入り口にして、皆(あなたを含む)が恥や外聞を気にせずに、自分の本当のコンディションを話せるような、オープンで信頼できる環境を築くこともできるのだ。


HBR.org原文:Be a Colleague That Others Can Confide In, April 01, 2020.


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