●注意深く話を進める
・聞き手について考える
部下の視点で見てみようと、アージェンティは述べる。「彼らの立場に身を置いて、自分だったら何が聞きたいかについて考えるのです」
もちろん、「最終的に終息します」という安心できる言葉が最も望まれているだろうが、部下としてより重要なのは、経営幹部は「情報を内部にため込んで」いないし、最悪の事態をただ待っているだけではないと信じられることだろう。部下が感じている恐怖を、できる限りやわらげるように努めよう。
・謙虚であれ
実際のところ、「この先に何が起きるかを、はっきりわかっている人などいない」とエドモンドソンは述べる。そのため、何が自分にもわからないかを認める必要がある。
たとえば、レイオフの可能性があるのかと従業員に尋ねられたとしよう。それが協議中であることをあなたは知らされているが、いったいどうなるのか、どのくらいの人員に影響を及ぼすかについては知らない。
そのような場合、アージェンティは次のように答えるよう勧めている。「実際どうなるか、伝えられればいいのだけれど、残念ながら私にはできません。最新情報が入り次第、共有します」
・悪い面を隠さない
好ましくないと思われるニュースは、少し粉飾したくなるかもしれない。チームの不安を軽減したいという気持ちは理解できるが、エドモンドソンは、そんなことをしても得をする人は誰もいないと語る。「悪い面を隠しても、ウソつきか、実態を把握できていない人に見えるだけです」
たとえば、幹部が給料の減額を決定したものの正確な数字がまだ決まっていない場合、具体的に明言できなくても、減額が起こらないかのように振る舞ってはいけない。何をしたところで、時間が経つにつれて事実は明らかになるので、厳しい現実を覆い隠しても後で裏目に出るだけだ。「真実が少しずつ明るみに出るようでは、信用を築けません」
・責任を果たす
レイオフや減給に関する話を告知する許可が出ていない場合は、何があっても口外してはいけない。「ほのめかすのもダメです」とアージェンティはクギを刺す。「命令に従うことは、あなたの会社に対する責任です」。部下に単刀直入に質問されても「実は、言ってはいけないんだけど……」と答えてはいけない。
エドモンドソンによると、最善策としてできるのは「現在、相当に不透明であることを認めつつも、思いやりの心を維持する」ことだ。エドモンドソンは、次のように語りかけることを勧めている。「こんな状況でなければ……と誰もが思うけれど、これが現実です。この危機が招いた不確実性や難題、混乱の中でも最善を尽くせるように協力し合いましょう」
・一貫性を保つよう努める
自分が賛成しかねるやり方で、直属の上司や経営幹部が危機に対応している場合、自分のチームとの率直なコミュニケーションにはいっそう気を遣う。
「この問題に対処するのは、一筋縄ではいかない」とアージェンティは述べる。彼が勧める手法は「なるべく、同じ真実を言っているが、ややニュアンスが異なっているだけのように聞こえるように努める」ことである。
たとえば、上司がリモートワークの方針として、全員が朝9時から夕方6時までオンラインでいることを課したとしよう。しかし、あなたはいつ、どのように働くかは部下にもっと自主性を与えるべきだと思っている。
その場合、方針を明確に説明するとともに、このストレスの多い時期、部下が自主的に最善の判断を下すとあなたが信じていることを、補足できるかもしれない。「賛成できるところを探し、同意しかねる内容を伝えるときも、敬意をもって告げるべきだ」と、アージェンティは指摘する。