レジリエント企業になるために
事業モデルを再検討せよ
マッキンゼーが行った金融危機時の分析では、各業界において一定群の企業は、他社よりも業績がよかったことがわかっている。これら"レジリエント"な企業は、売り上げこそ他社同様に落ち込んだが、利益の回復が早く、2009年の利益は他社が15%下落した中で約10%上昇した。これらの企業は、健全なバランスシートを保ち、危機の間には不要資産を売却し、調達費や販売管理費の削減に加え不採算商品の廃止などを迅速に実施していた。
こういった過去からの学びは参考になるはずだ。今回の危機の水準を踏まえたうえで、レジリエント企業となるためには、事業モデルを再検討する必要も出てくるだろう。例えば、世界各地に分散しジャスト・イン・タイムを追及したサプライチェーンを持っていた企業は、バックアップを持つモデルに変えるよう見直しを迫られるはずだ。Next Normal下においてレジリエントな企業となるために必要な変化は、あらゆる産業、機能にもたらされる。
「非接触」を契機に顧客へのアクセスは大きく変わる。B2B企業では「対面営業」がオンラインに切り替わることでデジタルツールの重要性が高まり、B2C企業では生活環境の変化や経済不安も加わり、消費者の新たなニーズや行動パターンに対応する必要がある。例えば、米国のトップ小売業者は道路脇で商品をトランクに積み込むサービスを検討し18カ月かけて移行すると計画していたが、今回のロックダウンで1週間以内に実現することになった。
製造業では、感染予防の観点から、IoT(モノのインターネット)やロボットの活用が活発になり、へルスケアにおいては、臨床現場の多様化(オンライン診療、モビリティクリニック等)や予防・セルフケアへのシフトが加速するだろう。極めて幅広い業種、個人を顧客とする金融機関は、変化への対応の柔軟性とスピードがより求められ、サービス業、そして社会インフラとしての二面性を考慮しつつビジネスモデルを変革していく。安全に対する意識の高まりは、モビリティの分野においてもモーダル・ミックス(移動手段の配分)の選好に変化をもたらすはずだ。
今回の一連の記事では、マッキンゼーが考えるコロナウイルスがもたらした経済危機のインパクト、Next Normalに対する考え方、そして企業経営に対する示唆を、全10回にわたってご紹介したい。
※マッキンゼーでは、COVID-19について最新情報を発信している。更なる情報については「知見」「COVID-19:ビジネスへの意味合い」をご覧いただきたい。