●自分のさまざまな可能性を探る

 先行きが見えないときや、自分が進んでいる道が予想外の展開になったときは、一つの選択肢に固執するのではなく、さまざまな選択肢を追求することが理にかなっている。

 順調な時期でも、キャリア・チェンジは完全に直線的なプロセスにはなりえない。やっかいな探究の道であり、自分のさまざまな可能性を試して学びながら、探っていく必要がある。

 自分のさまざまな可能性とは、こんな自分になりたいという、誰もが持っている考えだ。経験に基づく具体的なものもあれば、漠然としたあいまいなイメージや、思いついたばかりで未知数のものもある。現実的なものもあれば、純粋な空想もあるだろう。当然ながら、自分が特に気に入っているものもある。

 いまは、これまでにも増して、新しいキャリアを目指す旅は遠回りになるだろう。新しい分野で求められることのすべてに対応するためには、自分のさまざまな可能性と将来について、幅広く想像することが肝心だ。このプロセスを受け入れて、できるだけ多くの可能性を探ろう。

 ●「境界」期間を受け入れる

 キャリア・チェンジの過程では、「リミナリティ」という特徴的な感情を体験する。リミナリティとは、明らかに終わった過去と不確実な未来のあいだで、どちらつかずの状態だ。

 この境界時期は、感情面で不快になりやすい。拠り所がなく、方向性が見えず、「しがみつく」と「手放す」のあいだを揺れ動く。

 ただし、緊張をはらむ時期ではあるが、キャリア・チェンジの旅には欠かせない。この時期に、複雑な感情や相反する欲望の多くを消化できるからだ。リミナリティを挟むことにより、拙速に旅を終えて、まだ先にある、よりよい選択肢を逃さずに済む。

 目下の危機は、多くの人にとって、この宙ぶらりんの状態を長引かせる可能性が高い。ときどきいら立ちも覚えるだろうが、利点もある。

 ウィリアム・ブリッジスは『トランジション』で、次のように書いている。「人生の転機において、この非生産的に見えるタイムアウトを自己防衛的に感じる必要はない……一人きりで目的もないように思えるが、重要な内なる仕事をしているのだ」

 神経学の研究によると、リミナリティという境界時期を利用して「内なる仕事」をすることは、忙しさに追われながら自己改善に努めるよりも有益かもしれない。

 ダウンタイム(休止時間)は、脳の注意力とモチベーションを補充するだけでなく、人間性を十分に発達させる認知プロセスを維持するためにも不可欠だ。それを通じて、私たちは記憶を強化し、学んだことを統合して、将来の計画を立て、道徳的な指針を維持し、自己意識を構築する。