●プロジェクトを前進させる
キャリアの再構築を目指す一般的な方法は、本業以外の活動を始めることだ。
知識やスキルを養い、人間関係を培いながら、新しいキャリアへと踏み出す強靭な足を鍛える。たとえば、夜間や週末に講義を受ける、プロボノや顧問契約で働く、起業のアイデアを練る、などがあるだろう。
キャリアの再構築を取り上げた私の著書『ハーバード流キャリア・チェンジ術』のリサーチでわかったのは、多くの人が一度に複数の可能性を試しながら、それぞれの長所と短所を比較対照していることだ。これはとても重要なやり方で、実際的な問題だけでなく、キャリア・チェンジの原動力となる実存的な問題を考えることができる。
自分はどのような人間なのか? どのような人間になりたいのか? 自分が最も貢献できる場所はどこか? 空想と現実を試行錯誤しながら、実際に行動を起こしながら、自分がなりたい自分を知ろう。
とはいえ、現在の隔離生活とロックダウンの状況では、可能性は限られる。たとえば、新しい選択肢を模索したり、新しい事業の資金を調達したりする際に、これまでは請負契約や顧問契約で働くことが多かった。しかし、必要不可欠ではない予算が底を突きかけているいま、結果として多くの人がそうした選択肢を封じられている。
一方で、現在の状況だからこそ、本業以外の活動に時間とリソースを再配分することが、以前よりやりやすい人も少なくない。多くの人が、この好機をすでに利用している。
現在オンラインで講義をしている私は、キャリアの再構築を学ぶ受講者がコロナ危機にどのように対応しているかについて、オンライン調査を実施した。その結果、回答者2000人のうち半数が、「新しいことに挑戦したり、新しいスキルを学んだりする機会」ができたと答えた。
その新しいスキルが、リモートで働くことに直結している人もいる。もちろん、私もその一人だ。大学の多くの同僚と同じように、私もオンライン講義の方法をすぐに習得しなければならなかった。
新しいプロジェクトは、希望するキャリア・チェンジにつながる領域に限定する必要はない。今日では多くの人が、所属する組織で危機管理に取り組み、あるいは地域のボランティア活動に携わりながら、やりがいのある仕事に出会い、意外な発見をしている。
重要なのは、新しいさまざまな人と、新しいさまざまなことをやることだ。その過程が、自分自身や、自分の好き嫌い、さらには自分の強みを引き出す文脈や人を知る機会になる。